双極性障害の部下に対する上司の3つの対応ポイント

「双極はたらくラボ」の運営元リヴァで取締役を務める青木は、当メディア編集長である松浦の元上司。前職までのカウンセラー経験から双極性障害に関する職場の事例にも詳しい青木によると、双極性障害の部下に対する上司の対応方法には3つのポイントがあると言います。

それはどんなポイントなのか、松浦が話を聞きました。

〈聞き手=松浦秀俊(まつうら・ひでとし)〉

プロフィール 青木 弘達
株式会社リヴァの取締役。主にサービスの企画・開発、支援員の育成などに取り組む。

以前は小売業のマネージャーとして店舗運営や人事労務に従事し、退職後は社労士事務所を開業。労働局のカウンセラーや社会保険労務士として活動し、働く障害者のサポートに従事する。個人へのカウンセリングおよび企業に対して職場のメンタルヘルスケアに関するセミナーにも登壇。前職では障害者支援会社で人事を担当。

参考動画

双極性障害の部下への対応①
共通認識を持つ

ZOOMを用いてオンラインでインタビューを実施
松浦
松浦

双極性障害の部下に対する上司の対応について3つのポイントがあるそうですが、1つ目は何ですか?

まず上司と部下がお互いに共通認識を持つことです。

双極性障害の方には、エネルギッシュな軽躁状態とダウンしているうつ状態の落差がありますよね。状態によって同じ人とは思えないから、驚いてしまう上司もいるでしょう。

大切なのは、落差を認識する、つまり共通認識をお互いに持つことだと思います。

青木
青木
松浦
松浦

具体的に、どうすれば共通認識を持てるのでしょうか?

上司だけの努力でも、部下だけの努力でも、うまくいかないですね。上司側は、部下の双極性障害や疾患について、手を出しにくい分野と思ってしまいがちです。

なので、症状をその人が持つ個性だと認識することがおすすめです。

その上で、エネルギッシュなときはどんな状態になるのか、またどんなきっかけでエネルギッシュになるのか確認しておく。またうつ状態になってしまうときも、同じように状態やきっかけを確認する。

このように共通認識が持てると、上司としてはマネジメントしやすくなると思いますね。

青木
青木
松浦
松浦

私は「当事者の自己理解があまり進んでいない」という話をよく聞きます。

「どういうときに気分が上がっているか分からない」と話す人や、調子を崩したら会社を休む以外の対策がない人もいます。

このように、まだ自分で症状を理解できていない方はどうすればいいでしょうか?

なかなか難しいですね。上司にサポートする気があるならいいと思いますが、部下が状態を開示してくれるかが問題です。

青木
青木
松浦
松浦

はい。

まったく症状を理解できていないのであれば、カウンセラーをはじめ第三者を通して自己理解を進めるといいと思います。

ある程度は自己理解ができた段階で、上司に状態を伝えていく方法が現実的ではないでしょうか。

青木
青木
松浦
松浦

上司と部下という1対1の関わりだけでなく、第三者を立てて自己理解を進め、結果を仕事に生かしていくのですね。

そうですね。

上司としてはマネジメントの義務があります。当然ですが、部下にはちゃんと仕事をして、成果を出してもらうことが必要ですよね。

ただ何の取っ掛かりもない中で、上司と部下がゼロから共通認識を持つことは難しい。なので、部下は一定期間、専門家の力を借りて自己理解を深めていくのがいいですね。

完全に自己理解することは難しいので、ある程度分かってきたら、今の状態を上司に共有します。

すると段々、ベン図(図参照)が重なるように、理解の範囲が広がっていきます。

青木
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図:部下の共有に対して上司がしっかり対応することで理解が深まる

ベン図が重なれば重なるほど、お互いの認識が一致してくるので、上司も配慮すべき点が理解しやすくなるのです。

その人が力を発揮しやすい、または発揮できなくなるポイントが見えてくれば、マネジメントに生かせると思いますね。

青木
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松浦
松浦

労力はかかるものの、仕事を円滑にしていくためには必要な過程ということですか?

そうですね。

私は社会保険労務士をやっていたとき、双極性障害の部下を抱えている上司の方々から相談を受けていました。そこで思ったのは、双極性障害の方はパフォーマンスをしっかり出す方が多いということです。

だからこそ、力を発揮していたかと思うと、突然出社しなくなってしまったケースもあります。逆に発揮し過ぎるケースもあるので、驚いてしまう上司の方が多いですね。

だからこそ、お互いにきちんと認識をそろえることが大切です。

上司はうまくマネジメントして、部下もセルフマネジメントをしっかりやっていけば、良い形で成果を出せるのではないでしょうか。やってみる価値はあると思います。

青木
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松浦
松浦

部下側も症状が出たとしても、共通認識を持っていれば冷静に対応できるということですね。

双極性障害の部下への対応②
事実ベースで伝え合う

松浦
松浦

では、2つ目のポイントはいかがですか?

1つ目のポイント「共通認識を持つ」という前提ができた段階の話です。

共通認識をそろえる際、気付いたことや気になったことを、お互いに伝え合うことが必要だと思っています。

例えば上司から見て、部下の目が少し吊り上がってきたり、語気が少し荒くなってくることがあると思います。筆圧が濃くなってくるとか、パソコンをタイピングする音が大きくなってくるということもありますね。

変化に気付いたら、共通認識を深めていくためにも「コンディションは大丈夫?」と確認してみる。

ただ、上司も双極性障害の知識を付けてくると「この症状は軽躁ではないか?」とすぐに決めつけてしまいがちです。

部下に変化が生じると「調子が上がっているんじゃない?」などと言ってしまうことがあります。

言われた側にとっては不快ですよね?

青木
青木
松浦
松浦

私ならカチンときます。

「何でもかんでも病気のせいにするな」と言いたくなると思います。

これはすごくもったいないやり取りです。

そこで上司側は「上がっているんじゃない?」と判断した根拠を考えてみるといいですね。

その根拠を事実ベースで伝えていくのが、2つ目のポイントです。

青木
青木
真剣な受け答えの中にも時々、冗談を交え笑顔をみせる青木
松浦
松浦

伝えるタイミングは時間が経ってからでもいいのですか?
例えば一日経ってから「昨日、タイピングの音が大きかったよ」と伝えるとか。

早めの方がいいと思います。例えば明らかに軽躁状態であれば、何を言っても伝わらなくなるかもしれません。

ただ「目が少し吊り上がってきた」「タイピングの音が大きくなってきた」など予兆のような症状もあります。

その場合は「さっきタイピングの音がいつもより大きい気がしたけど、コンディションどう?」と確認する。

予兆的な症状については、なるべく早く伝えた方がいいと思います。

青木
青木
松浦
松浦

「上がっているんじゃない?」と決めつけずに「コンディションどう?」と聞いて、本人に回答させるのですね。

そうですね。何か別の理由でタイピングの音が大きくなっている可能性もありますから。

青木
青木
松浦
松浦

では部下が、本当は軽躁状態だけれど、隠したがって「大丈夫です」と答えた場合はどうすればいいでしょう?

よくある話ですね。その場合は上司側で記録を取っておくのがおすすめです。

一過性の症状であれば、些細な原因でちょっと気分が高まっただけかもしれません。

でも翌日も翌々日もタイピングの音が大きくて、ほかにも気になる点が増えてきたら、それも併せて伝えていきます。

あとは共通認識を合わせる上で「気付いたことを話しても大丈夫か」と了承を取っておくことが大切ですね。

青木
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松浦
松浦

合意を取っておくということですか?

はい。事前に合意を取らないと、言われた側は監視されている気分になって嫌ですよね。

共通認識をそろえていくためにも「見ていて気になったことを伝えてもいい?」と言っておくべきです。

また可能であれば、部下も上司に対して気になることを言えるといいと思います。

青木
青木

双極性障害の部下への対応③
仕事の仕方への配慮

松浦
松浦

では3つ目のポイントはいかがですか?

仕事の仕方への配慮です。

結局は1つ目と2つ目が進んでからの話ですが、双極性障害はその人の個性と相まって症状が出てきます。

そのため特性や症状の出方を押さえた上で、その人に合う仕事の仕方を配慮していくことが重要だと考えています。

「配慮」と聞くと「甘やかしている」と感じる人もいると思いますが、そうではありません。

パフォーマンスを発揮してもらうために、特性に合った仕事をしてもらうという意味合いです。

逆に不得意な分野は、可能な限り適性に合わせて取り組むなど、仕事の仕方を工夫することが大切ですね。

青木
青木
松浦
松浦

具体例を挙げてもらえますか?

人によって個性はまったく違いますよね。

同時並行で物事を進める方が合う人もいれば、色々なことに手を出すと刺激によって軽躁状態になる人もいます。

例えば、人との関わり方の量と質で考えるなら、関わる人数は多くても、関わり方が浅い方が刺激にならない人もいます。

逆に関わる人数は少なく、関わり方は深い方が安定する人もいますね。

また人数ではなく、時間がポイントであれば、人と関わる仕事と事務仕事のバランス調整で安定する人もいるはずです。

青木
青木
松浦
松浦

ポイントは人との関わりということですか?

これまで見てきた方はいずれも、人との関わりと睡眠のリズムが気分や体調に影響していると感じますね。

青木
青木
松浦
松浦

それは私も実体験で感じたことがあります。

営業職だった頃、プレッシャーを感じていた上に刺激も多く、仕事は難しいものだと考えていました。逆に今は、在宅ワークになったということもありますが、人の刺激が少なくて仕事をしやすいです。

また私自身は、同時並行で行う仕事が向いていると感じます。対面で行う支援職と在宅で対応するメディア運営の兼務は私にとっては適度な刺激で、気分の安定につながっていると思うからです。

自分に合った仕事の仕方を見つけていくのは、けっこう時間がかかりますか?

そう思います。

だからこそ、先ほどの共通認識を広げていくことと、お互いに気付いたことを確認し合っていくこと。2つの積み重ねによって、自分に合った仕事の仕方が、職場で見えてくると思います。

これはカウンセラーと話をしていても、客観的には見てもらえない点ですね。

上司部下の関係であれば、一緒に仕事をしている仲間だから分かってくる点があると思います。

青木
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