【世界双極症デー・フォーラム2026 レポート】当事者主導の活動報告とこれからの話

公開日: 2026.4.27

2026年3月29日、「世界双極症デー・フォーラム2026」がオンライン開催された。

第1部では、医療や研究の専門家・当事者・支援者が登壇し、それぞれの立場から報告や講演が行われた。第2部では、ドキュメンタリー映画『BrainStorm the Film』に関するディスカッションが行われ、「偏見を手放し、命をつなぎ、そして、回復への道を照らす」というメッセージについて考える機会となった。
フォーラムは昨年とは変わってオンライン配信のみで実施され、多くの人が様々な場所から参加可能であった。

本レポートでは、講演で語られた内容の一部を紹介する。

フォーラム概要

【日時】2026年3月29日(日)13:00-15:00
【会場】オンライン開催(Zoomウェビナー形式)
【第1部】
国際双極症学会年次集会 2025 in 千葉 における日本の当事者活動シンポジウムの報告
〇講演1:総会の報告と国際双極症学会の当事者活動の位置づけ 松尾幸治
〇講演2:当事者として、専門職として私にできること 木野内南
〇講演3:当事者主導の活動からの洞察と国際双極症学会後の広がり 松浦秀俊
【第2部】
ドキュメンタリー映画「BrainStorm the Film」を見てディスカッション

はじめに世界双極症デーとは?|加藤忠史(順天堂大学 教授)

冒頭では、加藤忠史先生から、世界双極症デーに寄せたコメントと、晴天で桜が満開の日曜日に視聴してくれている参加者への感謝のことばが述べられた。

世界双極症デーとは、双極症に対する理解を広げ、偏見や誤解を減らしていくために、2014年に定められた国際的な啓発デー。

3月30日は、双極症を抱えていたとされる画家、フィンセント・ファン・ゴッホの誕生日にちなんでいる。

日本では、2015年から日本うつ病学会が中心となりフォーラムを開催。コロナ禍で一度中止された年もあったが、今回で11回目を迎えた。

【講演要約】国際双極症学会総会2025の報告と学会の当事者活動の位置づけ|松尾幸治(埼玉医科大学 教授)

松尾先生は、国際双極症学会(ISBD)総会2025の報告と、国際双極症学会の当事者活動について紹介した。

概要:総会報告

総会のオープニングでは、日本の双極症の著名人紹介として、こっちのけんとさんのMVを視聴したと報告した。また、ISBDアジア支部におけるシンポジウムとして、日本・中国・韓国・台湾の各国の双極症診療ガイドラインについての報告があったと話した。

また、総会における当事者活動として、本フォーラムにも登壇した木野内氏も参加された「女性のための交流会」があったり、「日本における双極症当事者活動の現在と未来」について語るシンポジウムがもたれたことを報告した。
学会での当事者の登壇については、今後も継続していきたいと語った。

ポイント:「当事者であり専門家」の存在について

ISBDの執行部に、当事者であり専門家であるサラ・シュリーさんと、アンドレア・ヴァシレフさんが理事として活動していると報告した。

さらに、学会内に当事者協議会を組織し、学会の中で当事者メンバーがISBD学会とどのように関わっていったらよいかを検討しており、少しずつ前進していると語った。

最後に、双極はたらくラボYouTubeでのアンドレア・ヴァシレフさんの学会と当事者とのつながりについてのコメントを紹介した。

▼動画はこちら(コメント読み上げは11:45~)
https://www.youtube.com/watch?v=w6XOpbWW-K4&t=1s

【講演要約】当事者として、専門職として私にできること|木野内南(NPO法人 ネット心理教育ピアサポート副理事長)

木野内さんは、NPO法人「ネット心理教育ピアサポート」に関わってきた立場から、これまでの活動や気づきについて語った。

概要:当事者として、専門職として双極症について解説

双極症について、「躁とうつを繰り返す」よりも、「症状ありとなしを繰り返す」の方が実情に合っていると語った。
また、専門職であると同時に当事者であるExE(イーバイイー)として活動していることと、国際双極症学会でExEが注目されていることを紹介した。

専門職として関わっている心理教育については、「生活の主導権を取り戻すこと」と定義し、診療時間の制約や地域格差などが障壁であると語った。
木野内さんが関わる「ネット心理教育ピアサポート」は、ZoomとYouTubeでオンライン活動をしており、全国どこからでも心理教育を受けることができるのが利点である。

自分の治療方針を医師と一緒に決めるという、SDM(シェアードディシジョンメイキング)の概念についても解説した。

ポイント:ピアサポートである意味

最後に、ピアサポートである意味について、「自分も同じ」がもたらす変化があることだと語った。医療職には言いづらいことがあったり、普段同じ病気の人と集まる機会がなかったりするとのことである。

今後も、心理教育を続けていき、医療場面でオンライン心理教育が出てきたり、国際的な連携をする機会が登場したりすることを目指したいと話した。

▼ネット心理教育ピアサポート
公式サイトはこちら
公式YouTubeはこちら

【講演要約】当事者主導の活動からの洞察と国際双極症学会後の広がり|松浦秀俊(株式会社リヴァ 双極はたらくラボ編集長)

本メディアの編集長である松浦秀俊は、双極症Ⅱ型の当事者として、これまで行ってきた3つの支援活動について講演を行った。

概要:3つの支援活動について

オンライン当事者会(双極はたらくトーク)
「双極症で働くうえでの困りごと」をテーマに話し合う、オンライン当事者会を主催している。2018年3月から毎月1回開催しており、実施回数は累計76回、これまでの参加者は1000人を超えた。(※2026年3月時点)

Webメディア(双極はたらくラボ)
「双極症で働くヒントが見つかる」がコンセプトのWebメディアを運営。2021年3月30日に開始し、YouTube・LINE・Web等、多岐にわたって情報を提供している。

福祉サービス 就労支援事業所(双極はたらくチャレンジ東京)
日本初の、双極症に特化した就労支援サービスを提供している。「躁うつの波と付き合いながら、一般雇用へ」をコンセプトに、2025年1月に東京・日本橋でサービスを開始した。

ポイント:ISBD(国際双極症学会)後の反響

ISBDをきっかけに、アメリカとイギリスの当事者に動画取材を行ったことを報告した。
また、松尾先生とアンドレア先生の研究「双極症におけるセルフスティグマ軽減プログラム 実施の有用性およびその脳メカニズムの解明研究」に参加していることも紹介した。

▼参考動画
【気分循環症】アメリカでキャリアアドバイザーとして働く/朝型と夜型/双極症への偏見(双極性障害)
【双極症】イギリス研究者で双極当事者/当事者同士の支え合い/英国で著名な双極症当事者

ドキュメンタリー映画視聴・ディスカッション

第二部では、ドキュメンタリー映画「BrainStorm the Film」の一部を切り取った映像を視聴し、登壇者4名でディスカッションを行った。

4つのクリップを見て、当事者・研究者・支援者それぞれの立場から意見が交わされた。

①当事者による症状の体験談
→当事者2名が実際の症状を語った。
精神科医からは躁・軽躁状態が特に伝わりにくいことが指摘され、症状についてはいまだに広く知られていないことを問題視する声が上がった。

②躁症状とうつ症状の多様性
→診断に至るまでどんな治療を受けてきたかが語られ、人により症状が多様であることを念頭に置いて診断や治療について言及された。

③概日リズム・生物学的要因
→松尾先生から社会リズム療法について、加藤先生から視床室傍核についての解説が行われた。

④双極症の著名人について
→映画では双極症をもつ(とされる)著名人が多数紹介され、双極症当事者は創造性や起業家精神などの強みがあると言及された。

執筆者所感

本講演は、専門的な医学的知見と当事者のリアルな視点が調和しており、双極症の最前線を多角的に学べる貴重な機会となりました。

特に印象的だったのは、松尾先生も言及されていた「当事者主導」の活動の重要性です。
松浦編集長や木野内さんによる主体的な取り組みは、今後の支援のあり方として非常に意義深いものだと確信しました。
また、社会リズム療法や視床室傍核といった研究内容がわかりやすく解説されたことで、治療の進歩に大きな希望を抱くことができました。

全体を通じて理解の深化を実感する一方で、社会的な認知が未だ十分ではないという課題も再確認しました。
この学びを糧に、今後も様々なアプローチで認知拡大に努め、双極症を取り巻く環境の改善に尽力していきたいと考えています。

(執筆者:双極はたらく+くらしラボ編集部 千葉)

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