双極性障害で向いてる仕事と働き方[当事者の精神科医が語る]

双極性障害で向いてる仕事と働き方[当事者の精神科医が語る]

公開日:2021.12.21
最終更新日: 2024.3.29

Twitter(アカウント名:さくら精神科医)でフォロワーさんが約4万人いらっしゃる精神科医さくら先生。新刊「みんなの双極症」にて、双極性障害の当事者であると明かされています。 

今回さくら先生に「双極性障害と仕事」をテーマに双極性障害での適職や働き方など、書籍を深堀りしつつお話を聞かせてただきました。

〈聞き手=松浦秀俊(まつうら・ひでとし)〉

プロフィール さくら先生

精神科医。さくらこころのクリニック院長。三重大学医学部卒業。初期研修で挫折、休職を経験し、再起不能だと悩んだ過去あり。その後も苦悩しながらの医者人生。今は弱さを抱えつつも、自分のできることをやっていこうと前を向いている。自身の、医師として、患者としての経験を元に、Twitter(@sakura_tnh)でラクに生きるヒントを発信中。

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動画「精神科医に聞く双極性障害と仕事」

双極性障害での向いてる仕事とは?

松浦
松浦

双極性障害の方で仕事というと、まず「仕事の選択」というのが悩みにあがってくると思うのですが、先生の考えはいかがでしょうか?

同じ双極性障害という病気であっても、病状は様々ですし、今までどんな職歴があるかなど、個々人の条件に応じて考えていく必要があります。

例えば「パート勤務」なのか「フルタイム勤務」なのか、勤務形態の選択も大事なポイントですし、「そもそも今働ける状態なのか」ということを検討しないといけないかもしれません。

さくら先生
さくら先生
松浦
松浦

前提として、自分自身の状態を理解することが大切ですね。

フルタイムの勤務であっても以下の点を検討していきます。

さくら先生
さくら先生
  • 今まで経験した職種なのか。それが適していなかったら違う仕事を選ぶべきなのか
  • 残業が発生しやすい職種なのか
  • 休日に拘束される可能性があるのか
  • シフトでの変則的な勤務が予想される仕事なのか
松浦
松浦

フルタイムと一言でいっても、色々な側面から考える必要があると。

「就労」と聞くと、フルタイム勤務を思い浮かべがちですが、色々な働き方があります。

私が担当している患者さんの中には、単発や短期のアルバイトに取り組み、比較的元気なときに働いて、しんどい時期には無理せず家のことだけするという方がいます。

収入額や雇用の安定性からすると見劣りするかもしれませんが、自信がつけば違った働き方もできるので、悪くないトライの仕方でしょう。

さくら先生
さくら先生

また、週に3日、1回5時間の軽作業をして、他の日にはデイケアや趣味の時間に充てるなどして、ライフワークバランスを保っている方もいます。

さくら先生
さくら先生
松浦
松浦

仕事とプライベートの両立ですね。何か具体的な職種での例はありますか?

資格職で分かりやすい例が「看護師」でしょう。

さくら先生
さくら先生

3交代のシフト制であったり、医療現場での心身に負担がかかりやすい仕事なので「今まで通り月に4、5回夜勤のある働き方を続けるのか」、「少なくとも夜勤を外してもらう勤務をするのか」、「病棟勤務だけでなく外来で働くのか」など、同じ看護師でも働き方は様々です。

病棟勤務にこだわらずに病状や今までの職歴に応じて働き方、働く場所を選択していくことが必要ですね。

さくら先生
さくら先生
松浦
松浦

私も双極性障害かつ看護師の方に何人かお会いしたことがあります。

夜勤が辛いということで働き方を考え直して日勤の仕事に転職する、学校で看護学生に教える側になる等の工夫されている方もいます。

せっかく取った看護師の資格を活かしていく上で、夜勤が絶対必要だと考えるとしんどいかもしれません。もちろん夜勤をうまくやりながら働く人もいますが、そこも工夫次第ですね。

松浦
松浦

会社の中で、双極性障害の方に適した職種はありますか?

会社の中で言うと営業職や内勤の仕事、淡々と何か軽作業をする部署など色々ありますよね。

例えば、誰かと接することでストレスがたまりやすい方は営業職は避けるなど、同じ会社の中でもご自身の特性や病状などに応じて選ぶ必要があります

さくら先生
さくら先生
松浦
松浦

「働き方を変えたり、工夫をしてうまくいった」という具体的なケースはありますか?

仕事で無理をして双極性障害を発症したり、仕事のストレスから体調のコントロールが上手くいかない、という方は多いと思います。

その中でも、仕事と病気が相関することに早く気づけた方は、ご自身の裁量の範囲の中で仕事のやり方などを工夫されていますね。例えば、一日の内で業務をなるべく早く切り上げられる工夫をしたり、こまめに休憩を取るなどです。

周囲の人に理解を求めて、しんどい時にはできるだけ定時退社をする、半休をいただく、などの配慮をしてもらい、不調を乗り越えている方もいます。

さくら先生
さくら先生

双極性障害で仕事をする工夫は
「エネルギーの温存」

松浦
松浦

「病気をオープンにするかクローズにするか」という点で、私は今の仕事ではオープンにできている分、働きやすさを感じています。

しかし同病の他の方のお話を聞くと、クローズで働かれている人も多くいます。クローズの方で、工夫しながら働いている事例はご存知ですか?

クローズの方は、精神的な病気であることを前面に押し出して配慮を得ることが難しいので、身体の不調としてお休みをいただくなどの工夫が必要です。

後はプライベートの時間をできるだけハードモードにしないという工夫もありますね。

さくら先生
さくら先生
松浦
松浦

「ハードモードにしない」とは、どんなことですか?

仕事が終わってから飲みに行くことなどはできるだけ避けて、静穏な活動をしながら夜を過ごす。

休日も仕事の状況によっては穏やかに過ごして、エネルギーを温存する工夫をされている方が多いです。

さくら先生
さくら先生

仕事をして一晩寝て回復していなければ
何かしらの不調がある

松浦
松浦

「どの程度の抑うつ状態なら休むべきなのか」という点についてはいかがですか?

月曜から金曜まで働かれている方を例にすると月曜の朝も火曜の朝も、どの日の朝の体調も同じであるのが理想的ですね。

一日仕事をして夜休んで、次の朝に元の体調に戻っていないということは、何かしらの不調が起こっていると考えるべきです。

あるいは、仕事の質や量が過剰になっている可能性もあります。

以前は楽しんでいたことが楽しめなくなることも一つの指標になるので、その点も意識してみて下さい。

さくら先生
さくら先生
松浦
松浦

私もうつ期を振り返ると、何かを楽しもうという発想が無くなっていた気がします。

いずれの場合であっても、1日の勤務時間や勤務日数を減らす、業務量や業務内容を見直すといった軌道修正を要します。

抑うつ状態になると思考能力が落ち、ものごとの捉え方が極端になって冷静な判断ができなくなります。

そのような事態に備えて以下のことをメモしておき、定期的に自己チェックすることをお勧めします。

さくら先生
さくら先生

数字で表せるものを指標として
体調の変化に気づく

松浦
松浦

体調の変化をつかむのは、自分の意識で「昨日と何か違うかな」と気付いていく感じですか?

数字で表せるものを指標とするのが一番です。

さくら先生
さくら先生

多くの方が「睡眠時間」を挙げられると思いますが、(気分が)上がってきても下がってきても睡眠時間は短くなります(非定型うつの症状の場合は過眠になる方もいます)。

ずっと7時間眠れていた方が5、6時間睡眠になったり、工夫してもそれ以上眠れなくなるというのは、何か気分症状が起こっているというサインと見ます。

そういった具体的な数字で判断できる指標を作るのがよいでしょう。

さくら先生
さくら先生
松浦
松浦

目に見える数字で判断し、昨日今日と比較して変化があれば早めに対処していくということが、働く上で大事になるんですね。

そうですね。そういった指標を作り実際にセルフチェックを日々している方は、変化に早く気づいて大事に至らず、長期の休職になりにくい傾向にあると感じます。

さくら先生
さくら先生

書籍「みんなの双極症」では
仕事以外にも様々なケースを紹介

みんなの双極症」は、さくら先生がブログ上で「主治医には聞きにくいこと」をテーマに双極性障害の方から受けた質問を一冊の本にまとめたものです。

患者の困りごとや悩みごとに具体的に助言しており、科学的根拠のある話から、先生の治療者として、経験者としての経験からの回答となっている部分もあります。

この本を通じて、病気への理解を深めることや、再発予防のための生活習慣を見直すことはもちろん、ご自身の困りごとについて、主治医、家族、支援者などとのコミュニケーションに役立ててみてはいかがでしょうか。

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