躁うつの波と付き合いながら働くための工夫と避けたい行動とは?【睡眠専門医×双極はたらくラボ編集長対談】

公開日: 2024.11.8
最終更新日: 2024.11.11

『ちょっとのコツでうまくいく!躁うつの波と付き合いながら働く方法』発売を約1週間後に控えた2024年9月19日、睡眠専門医・渥美正彦先生と双極はたらくラボ編集長・松浦秀俊のコラボライブが開催されました。

「双極症当事者が病気に気づいてから就労し伝道者になるまでの道」というタイトルで200名を超える視聴者が見守るなか、話題は、松浦の幼少期、黒歴史というパーソナルな話から双極症(双極性障害)と付き合いながら働くために必要なことの話へ。


今回は、そんなコラボライブの様子をレポートというかたちで一部ご紹介します。

▼イベント全体は動画でご覧いただけます
https://www.youtube.com/live/FeJNAFiByg0?si=iH93GD5LOEVasV-L

プロフィール 渥美正彦(あつみ・まさひこ)

医療法人上島医院院長
精神科と神経内科での臨床経験を生かし脳と心の問題に幅広く対応
YouTubeチャンネル「睡眠専門医渥美正彦」で睡眠と心の専門知識を発信

プロフィール 松浦秀俊(まつうら・ひでとし)

双極はたらくラボ編集長/精神保健福祉士/公認心理師
1982年島根県生まれ。21歳の時に双極性障害を発症。20代で転職3回休職4回を経て、リヴァの社会復帰サービスを利用。のち、2012年に同社入社(現職での休職0回)。 一児の父。

Q.双極症と付き合いながら働くために必要なことを3つ教えてください

渥美先生
渥美先生

安定して働いたとしても、完全に双極症の症状を無くすことはできないと思うんですよね。落ちる時もある、波もある。その前提で、良い状態を続けていくために工夫していることはありますか。

松浦
松浦

まず定番ですけど、平日だけではなく土日も含めて、生活リズムをちゃんと守ることですね。

昔はリズムが崩れた途端、簡単に調子を崩していました。休みの日だからって昼まで寝ていたりしたんです。今は、土日なら引きこもって1人でずっと過ごすか、人に会いに行くのかなど社会との接点を考慮して、自分の中でリズムをつくって日々過ごしています。

乱れたら戻そうとする意識は常にあって、今日は遅くまで起きてしまったとか夜出掛けたなと思ったら翌日は予定を入れないなど、ひたすらリカバリーを徹底しています。

前提として生活リズムを整えた上で、いかにストレスを工夫して対処していくかが大切だと思います。

オンラインライブ中の様子
松浦
松浦

2つ目は、症状のサインを捉えることですね。

毎日の気分を-5から+5の数字で記録しておいて、+1から-1の間だったらOKにしています。±0じゃないといけないとなるとそれはそれでしんどいんで、波があること前提の考え方です。+2とか-2とかちょっとOKエリアから外れてきたら、いかに戻すかを考える。

予防と症状が出始めのタイミングで手を入れるみたいな感じです。

渥美先生
渥美先生

3つ目に必要なのは、どんなことですか?

松浦
松浦

相談先を持つことですね。

昔は誰にも相談できず相談先もなくて。ただ、相談先って待っててもできるもんじゃないなと気づいたんです。それで勇気を出して頼ってみると、意外と助けてもらえて。これは渥美先生が言われた話かもしれないですが、ありがとうって感謝を示すようにしています。

あえて頼るようにしたり、悩んでることがあって…と相談する工夫を積み重ねました。去年、結構大きく気持ちが落ちた時があったんですけど、過去にないぐらい相談をいろんな人にして、持ち直せました。

Q.双極症の人はこれだけはやめとけ! というNG行動を教えてください

渥美先生
渥美先生

続いての質問です。双極症ならこれだけはやめとけ、ということはありますか?

松浦
松浦

もう、徹夜ですよね。寝ないと簡単に生活リズムが乱れるのでNG。それ以外はどうでしょう…先生、なにかありますか?

渥美先生
渥美先生

明日でいいことを今日決めるのはやめた方がいいでしょうね。

今の時代ってみんな刹那的で、自己啓発的なものを見てると“すぐやる人が成功する”みたいなのがあるじゃないですか。

それは1つの考え方なんですけど、双極症とか気分に波がある方は、衝動的な判断をして後で後悔することもあるので、注意が必要かなとは思います。

松浦
松浦

大学1年生の時、兄の影響で『7つの習慣』を読んで感化されて、行動しまくってました。自分の傾向も自覚せずに“すぐ行動する”とか“目標に向けてひたすらやっていく”とか、軽躁に拍車をかけていましたね。

渥美先生
渥美先生

僕も『7つの習慣』大好きなんですけど、 緊急性と重要性で分けるという時間管理マトリックスというのがあって。

緊急で重要なものをみんなやりまくるけど、本当に価値あるものは重要だけど緊急じゃない。

時間をかけてじっくり取り組むべきことが人生の本当の価値を高めるので、それを全部緊急に入れてしまうと本当に重要なものに対して価値のある判断ができないんじゃないだろうかということなんですね。

松浦
松浦

渥美先生に教われば良かったです(笑)

Q.『ちょっとのコツでうまくいく! 躁うつの波と付き合いながら働く方法』の内容を教えてください

渥美先生
渥美先生

来週、9月27日に書籍を発売すると聞きました。どんな内容なんでしょう?

松浦
松浦

『ちょっとのコツでうまくいく! 躁うつの波と付き合いながら働く方法』は全部で5章あって、双極症とはどんな病気かという内容から始まり、2章3章で仕事に絡めてどんな支障が症状ごとにあるのかを、私の事例を主に取り上げています。

続く4章が、就労支援の現場で伝えてる内容を基にワークブック形式でまとめた「トリセツ」です。最後の5章が、それを踏まえてどう生きていくかという内容ですね。

イラストと漫画を書いてくれたのは、漫画家・のんた丸孝先生です。漫画は一章ごとに見開きで入っていて、読みやすくなっていると思います。

Q.これからどんな生き方をしたいか教えてください

渥美先生
渥美先生

松浦さんは、これからどんな生き方をしていきたいですか?

松浦
松浦

私は双極症の診断を受けてから、「元気=ベストな状態」だから、抑えて自己理解して対処して、ちっちゃい波でずっと生きていかないといけないと思っていたんです。

でも、それを今の会社で1年ほど続けていく中で、だんだん「本当にやりたいことはやれないのかな、ずっと我慢して生きていかないといけないのか」と考えるようになって。

葛藤を抱えながらも、自分なりに試行錯誤を繰り返すうち「ある程度、自己理解と対処が自分の範疇でできるんだったら無理のない範囲でやりたいことをやってもいいのでは」という考えに徐々に変わっていきました。その延長線上にこの書籍の出版や来年立ち上げ予定の就労移行支援事業所があるんです。

10年前の私から見れば、今の私はやりすぎている状態です。でも、10年かけてちょっとずつチャレンジをして、できることの幅を広げてきたことで、今では無理なくできるようになりました。渥美先生が仰ったみたいに、時間をじっくりかければやれるんだと実感しています。チャレンジする難易度は無理にあげないで、このままやれる範囲でやれることをやっていくということが、これから生きていく方向性なのかもしれないですね。

渥美先生
渥美先生

ゆるゆるゆるゆるゆるゆるゆっくりと、ですね。

Q.双極症・メンタル疾患を抱える人・支える人に一言

渥美先生
渥美先生

最後に双極症を抱えている人、支えている人に当事者兼・支援者兼・発信者としてぜひ一言お願いします。

松浦
松浦

私の取り組みを見ると誤解される部分があって、双極症=働かないといけない、働くべきだという捉え方をされやすいんですけど、双極はたらくラボのベースにあるのは「働きたいと望む双極症の人」です。

双極症の症状は人それぞれで、働きたくない人に無理やり働けというものではないんです。 原点としてあるのは、十数年前に自分が働きたいけれど働けない、あまりに選択肢がなく情報もないという状況。

双極症で働きたいと望む人に対して、双極はたらくラボでそういう情報は少しは増やせたと思うので、もし良かったら『ちょっとのコツでうまくいく!躁うつの波と付き合いながら働く方法』を手に取ってみてください。

編集長の著書『躁うつの波と付き合いながら働く方法』が発売!

双極はたらくラボ編集長・松浦秀俊の書籍『ちょっとのコツでうまくいく! 躁うつの波と付き合いながら働く方法』が、9月27日(金)より全国の書店およびオンライン書店にて発売開始となりました!

双極症での働き方に悩む方へのヒントが詰まった一冊です。ぜひお手にとってご覧ください。

※本ページのリンクから商品を購入すると、売上の一部が双極はたらくラボに還元されることがあります。

第1章「双極症とはどんな病気か」無料全文公開中!

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