双極性障害とADHDの違いや誤診、仕事の工夫などを精神科医・益田裕介が解説

双極性障害とADHDの違いや誤診、仕事の工夫などを精神科医・益田裕介が解説

公開日:2022.6.1
最終更新日: 2024.3.29

YouTubeで精神疾患に関する情報を発信し、2022年5月末時点でチャンネル登録者数が28万人いらっしゃる精神科医の益田裕介先生。普段は「早稲田メンタルクリニック」の院長として活動されています。

今回は「双極性障害とADHD」について症状の違い、併発した場合の対処法、それぞれの働き方の工夫などをお話しいただきました。

〈聞き手=松浦秀俊(まつうら・ひでとし)〉

プロフィール 益田裕介先生
防衛医大卒。陸上自衛隊、薫風会山田病院などで勤務後、2018年に早稲田メンタルクリニックを開業。「仕事のうつ」「大人の発達障害」などが専門。

動画「精神科医・益田裕介が双極性障害とADHDの違いや誤診/併発/仕事を解説」

双極性障害とADHDは似ている?違いと誤診の可能性

松浦
松浦

益田先生は発達障害と精神疾患についてYouTubeで発信されたり、クリニックで診断されたりしています。

そこで今回は、2つの症状を紐づけてうかがいたいと思います。

まず私自身の体験からお伝えすると、過去に双極性障害ではなく※ADHDなのではないかと感じたことがありました。

きっかけは2つあります。

松浦
松浦

1つ目は、何気なく発信したTwitterの内容に対して付いたコメントです。

「新しいものが好き」「よく新しいことに手を出す」といった発信に対して、
「松浦さんは双極性障害ではなく、ADHDなのでは?」というコメントが付きました


2つ目は職場の会議でのこと。
話が展開していくにつれて頭が真っ白になり、何を話すべきか分からなくなったのです。

この状態についてインターネットで調べたら「強い焦燥感はADHDの特徴」とあり、自分に紐づけて考えるようになりました。

では、双極性障害とADHDにはどのような違いがあるのか説明していただけるでしょうか。

※ADHD=注意欠如・多動症と呼ばれる発達障害の一種。「不注意」「衝動性」が特徴。

そもそも2つは全然違う病気です。

双極性障害と比べると、ADHDはまだ一般的に知られていません。

そのためご高齢のお医者さんであれば、ADHDをあまりご存じない方もいらっしゃいます。

結果的にADHDでありながら双極性障害と誤診されているパターンが多いのではないでしょうか。

益田先生
益田先生
松浦
松浦

誤診になってしまうのはどのような場合でしょうか?

ADHDについて詳しくない医師の場合、気分の波がある病気と言えば双極性障害しか思いつかないかもしれません。

実際は同じような気分の波があっても、双極性障害の場合もあれば、ADHDの場合もある。※境界性パーソナリティ障害の場合もあるわけです。

にもかかわらず診断の選択肢に双極性障害しかない場合、誤診につながるのではないでしょうか。

益田先生
益田先生

※境界性パーソナリティ障害=対人関係が不安定になる病気。場合によっては相手のために、衝動的に行動したり、必要以上に頑張ったりする。

双極性障害とADHDが併発している場合も

松浦
松浦

では当事者の方から「自分が双極性障害なのか、ADHDなのか分からない」といった相談はありますか?

ありますよ。

メインの病気に双極性障害があって、さらにADHDを患っている方もいます。

ただ気分の落ち込みといった双極性障害の症状が大きく、ADHDの症状が軽い場合には、基本的にADHDについては指摘しません。

このような方は少しおっちょこちょいなだけです。「空気が読めない人だな」と思っても、わざわざ自分から口に出さないですよね?

なので患者さんから質問された場合だけ「確かにADHDらしい特徴はありますね」と返答しています。

益田先生
益田先生
松浦
松浦

双極性障害とADHDが併発した場合、どのような状態になり、どう診断されるのでしょうか?

ADHDをはじめとする発達障害のある人は、もともと不注意が多い傾向にあります。

そこへ双極性障害が加わると、
「うつのときは落ち込んでミスが増える」
「躁のときはかなり元気になってミスが増える」
というように、躁うつの波によって異なるミスをしやすくなるのです。

そもそも双極性障害はエネルギー量の多さと少なさによって、異なる症状が表れる病気です。

一方、ADHDは不注意といった本来の性格に関係する症状が表れるため、両者は根本的に違う病気と言えます。

益田先生
益田先生
松浦
松浦

ADHDの症状は、双極性障害によって増幅される場合があるということですね。

では、双極性障害とADHDを併発する人の割合は多いのでしょうか?

一般人口の中で双極性障害を発症する割合は1~2%ですね。
併発する人の割合はそれよりも多いと思います。

益田先生
益田先生

注:成人期のADHDと双極性障害の併存割合は21.2%

参考文献:辻井農亜「S01-2,ADHDと気分障害,児童青年精神医学とその近接領域」(2017,58(5),pp.614-618)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscap/58/5/58_614/_article/-char/ja/

双極性障害とADHDの人が仕事をするためにできる工夫

双極性障害の人が働くための工夫

松浦
松浦

双極性障害の方、ADHDの方、併発している方がそれぞれ働く上でできる工夫や対処法はありますか?

双極性障害の方からお願いします。

まず双極性障害の方が働く上で気を付けて欲しいのは、きちんと通院することですね。

双極性障害の方は大多数が治療の途中で通院しなくなってしまうものです。忙しくても月に1回の通院を、スケジュールに組み込むようにしましょう。

益田先生
益田先生
松浦
松浦

通院だけすればいいのでしょうか?服薬は必要ですか?

もちろん服薬も必要です。

多くの場合、躁状態に入るとうつ状態の気分を忘れてしまうため、きちんとお薬も飲んでください。

あとは家族にしっかり把握してもらう。会社でも大変な事態が起こり得るため注意する。

そもそもまずは通院することで予防線を張れると思います。

益田先生
益田先生
松浦
松浦

病気を明かしていない「クローズ」の場合はどうすべきでしょうか?

同じく通院することが重要です。

症状は自分では分かりにくいため通院し、家族に把握してもらうことで予防線を張りましょう。

益田先生
益田先生

ADHDの人が働くための工夫

ではADHDの方が働く上で気を付けることはありますか?

ADHDの方は不注意によるミスや忘れ物が多いです。必要なものを全部カバンに入れておくことで予防する方は多いですね。

発達障害の方向けに日常生活の送り方が書かれた本が多くあるため、そちらも参考にしてみてください。

あとは手帳を使うことをおすすめします。スケジュールはスマートフォンで管理するのではなく、紙に書くことがポイントです。

益田先生
益田先生
松浦
松浦

スマートフォンで管理するより、紙の手帳に書くことをおすすめする理由は何ですか?

毎回、真っ白のページに自分から書き込んでいけば、自分なりにカスタマイズしやすいためです。

ADHDの方には自分の力で予定を書きこんだり、調整したりする行為が必要なため、手書きをおすすめしています。

あとは仕事や日常生活で必要なことを習慣化していけば、ミスは減っていくはずです。

益田先生
益田先生

双極性障害とADHDを併発している人が働くための工夫

松浦
松浦

では、双極性障害とADHDを併発している方の場合、何に気を付ければよいでしょうか?

先ほど紹介した対処法の両方に取り組みましょう。

併発しているからといって、新しい症状が出るわけではありませんから。

益田先生
益田先生
松浦
松浦

ちなみにADHDの方は、受診の重要度は高いですか?

受診はした方がよいですが双極性障害と異なり、薬の必要性は低いため受診を強制してはいません。

益田先生
益田先生

双極性障害とADHDの人には精神医学の勉強が有効

松浦
松浦

他に双極性障害とADHDの方へ伝えたいことはありますか?

確かに症状だけを見ると、2つを区別するのは難しいかもしれません。

ただ脳の仕組みは会社と似ていて、手を動かす組織、記憶する組織、感情をつかさどる組織などが組み合わさっています。

それぞれ別の臓器が組み合わさって1つのものを作っているのです。そのため一見同じような症状が表れても、原因となる脳の場所は異なるはず。

双極性障害とADHDの違いが少しでも気になるなら、精神医学を深く学んでみてもよいのではないでしょうか。

精神科に通う患者さんは、精神医学の知識があればあるほど治療に役立てられます。自身の病気について「もっと深く知る」ことが重要です。

益田先生
益田先生
松浦
松浦

では深く知るために、先生のチャンネルを見るのも1つの手ですね。

そうですね。
勉強すればするほどよいと思いますよ。

益田先生
益田先生
松浦
松浦

先生のチャンネルは分かりやすく色々と解説されているので、ぜひ見ていただけるとよいなと思います。

本日はありがとうございました。

双極性障害やADHDの人におすすめ「精神科医がこころの病気を解説するCh」

益田先生が運営するYouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」。うつ病などの精神疾患や発達障害について解説されています。

精神疾患との向き合い方や回復した人の特徴、治療の仕方、休職の基準などの有益な情報を多く発信中。

病気と向き合い、最適な治療を受けるためには、自身や家族の症状を正しく理解することが重要です。ぜひ益田先生のチャンネルを参考に、精神疾患に関する知識を深めて、治療の参考にしてみてください。

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