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2023年2月13日に発売された雑誌『こころの科学増刊(日本評論社)』に、双極はたらくラボ編集長の松浦が寄稿した「当事者が語るセカンドオピニオン」が掲載されました。
寄稿文では、松浦の当事者・支援職視点での見解や、双極性障害当事者を対象に実施した「セカンドオピニオンに関するアンケート」の結果が紹介されています。
アンケートは2022年10月7日(金)~13日(木)に実施され、215名の方が回答、そのうち2名の方はインタビューにも答えていただきました。
ご協力いただいた皆さまに厚く御礼申し上げます。
今回は、寄稿文で紹介しきれなかった詳細を含む「セカンドオピニオンに関するアンケート」結果を紹介しますので、セカンドオピニオンについて検討する際、ぜひ参考にしていただけると幸いです。
目次
全回答者:215名(双極性障害と診断済み)
215名中「セカンドオピニオンを受けたことがある」と回答したのは、27.4%(59名)にとどまっており、半数以上の方が、セカンドオピニオンを受診した経験がないと回答していました。
「セカンドオピニオンを受けたことがある」回答者は、どのように受診先を探したのでしょうか。
「受けたことがある」回答者のうち44.1%にあたる26名が「SNS以外のネット検索」で受診先を探していました。
SNS以外のネット検索を利用した理由としては、「インターネット上の口コミや自宅からの距離を参考に選んだ」といったことが挙げられていました。
また25.4%にあたる15名の方は、カウンセラーや支援機関などの紹介を受けて受診先を見つけていました。
その理由として、医師との相性や、紹介してくれた機関との信頼関係を重視しているから、と回答している方が多く見られました。
一方で「保健師から選択肢なく紹介された」という回答があり、自分の意思で決められなかったケースもあることが分かりました。
参考にしたもの:SNS以外のネット検索を使って
決め手「薬に頼り過ぎない治療を行なっているとHPに書いてあったため、信頼できると思った」
参考にしたもの:カウンセラーや支援機関などの紹介
決め手「医者の診断と薬に対する説明が納得いくものだった。詳細な問診をされたので、信頼できると感じた」
参考にしたもの:カウンセラーや支援機関などの紹介
決め手「保健師から選択肢なく紹介された」
参考にしたもの:SNSを使って
決め手「大学病院の専門性が高いということ。双極性障害に特化した短期間の検査入院があったこと」
セカンドオピニオンを受けようと思った理由は多岐にわたっています。その中で最も多かったのが「主治医に関すること」(30.5%、18名)です。理由としては、
・話を聞いてもらえない
・態度が威圧的
・診察中、パソコン画面ばかり見ていて顔を向けてくれない
などが挙げられ、主治医に対する何らかの不満がセカンドオピニオンを受けるきっかけになっているようです。
またセカンドオピニオンを受ける理由に「診断名」「薬の処方」に関して不満を抱いたという回答も多く挙げられていました。
理由としては
・確定診断が欲しい
・薬の量が多すぎるので減薬したい
・薬の効果がないので別の病気か確認したい
などが挙がっていて、別の医療機関でこれまでとは異なる治療を受けてみて症状を改善させたい方がいることが分かりました。
理由:主治医に関すること
「主治医の言葉遣いや態度が冷たかった(と感じた)ので、きちんと話を聞いてくれる/きちんと話をしてくれる医師が居れば転院したいと思ったため」
理由:主治医に関すること
「診察中、主治医がPC画面ばかり見てこちらの顔を見てくれなかったから。顔を見ないのに正確な診断ができるのか疑問だった」
理由:薬の処方に関すること
「鬱の診断を受けて薬を飲んでいたけど、良くならなかったから」
理由:他の治療法に関すること
「発達障害の検査を受けるため」
理由:その他(今の通院先が自宅から遠いため)
「通院先が遠く交通費がかさむため、自宅から近く通いやすい通院先に変更したかったため」
セカンドオピニオンを受けた結果について、7割以上の方が「満足」「やや満足」と回答しています。
「満足」「やや満足」の理由としては、併発していた病気を発見できた、親身に医師が対応してくれた、社会復帰できたなどが挙げられていました。
セカンドオピニオンによって状況が進展したと捉えているようです。
一方、残りの2割強を占める「やや不満」「不満」と回答した方の回答理由からは、期待に対するギャップが生じたと推測できます。
ある方は、セカンドオピニオン先の医師が「確定診断を先延ばしにしている印象」を受けたそうです。
セカンドオピニオンを受けた方の多くは、現状を変えるための期待を抱いています。
結果的に期待とのギャップを感じた人が、不満を抱いていくと考えられます。
・満足
「主治医が優しかったことと、自分が双極性障害と分かったこと。性格ではなく、脳の病気だからあなたのせいではないと優しく言ってくれました」
・満足
「減薬希望だったのですがそのとき減薬が適切でない理由やその後の減薬計画を一緒に立て実施できたので」
・やや満足
「時間をかけて、じっくり穏やかにこれまでの症状や状況を聞いて頂けたので、気分が少し楽になりました」
・やや満足
「最初の主治医より信頼できそうだった。説明などが論理的だった」
・やや不満
「あまりじっくり聞いて、調べてもらったという気がしなかった。今の主治医の見立てで良いのではないか? 薬が少なく感じるが。という以上のことは、言ってもらえなかった」
・不満
「態度が冷たいうえ『担当医の指示を聞け』と説得するばかりだった。更に言えば、やはりうつ病ではなく双極性障害であり、薬も病状に合っていなかった」
・不満
「私自身の意思はほとんど尊重してもらえていない感じがする診察時間が毎回続き、症状がさらに悪化したから」
セカンドオピニオンを受けたことがない方のうち、約6割はセカンドオピニオンを検討したことがありませんでした。
一方32.7%の方が検討したことが「ある」、7.7%が「現在検討中」と回答しており、約4割の方が一度は検討の経験があることが分かります。
セカンドオピニオンを検討したものの受けなかった理由は「費用が高い」「手間がかかる」「今の主治医に伝えにくい」などでした。
セカンドオピニオンは健康保険適用外で、費用が全額自己負担になるため、一般的に高額であるのが特徴です。
参考:セカンドオピニオンの意味とは?受け方やかかる費用について解説 | 保険テラス
経済的な負担が、セカンドオピニオンへのハードルを上げる一因になっていることがうかがえます。
・受けなかった理由
「全額自己負担になるのかなと考えたら面倒になった」
・受けなかった理由
「紹介状が必要と思われる。現在の主治医に言い難い」
・受けなかった理由
「セカンドオピニオンではなく、転院という選択をしたため」
・受けなかった理由
「主治医へどう説明するか分からなかったため」
・受けなかった理由
「違う病院にいくハードルが高いと感じた」
アンケート回答者のうち2名に、セカンドオピニオンに関するインタビューを受けていただきました。
回答の一部をご紹介します。
セカンドオピニオンを受けた理由
処方を自分の希望で操作できる状況で、医師が考えて治療してくれるわけではありませんでした。
アドバイスもなく、薬が出されるだけになっていき、現状を変えるためセカンドオピニオンを検討。
主治医からは引き留められましたが、具体的に行きたい病院名を伝えたら話が進みました。
セカンドオピニオン先を探した方法
心療内科・地域・双極性障害のキーワードを組み合わせてネット検索した結果から選択。
主治医に対しては絶縁ではなく、別の病院を「試してみたい」という表現で伝え、了承をもらいました。
セカンドオピニオンの結果
減薬の希望を聞き入れてくれました。
顔を自分の方に向け、時には笑顔で話を聞いてくれました。
ロボットの医師から人間の医師に変わったような印象です。
※Bさんはセカンドオピニオンではなく転院でしたが、参考になる情報をまとめました。
転院した理由
東京の家からいちばん近い病院に月1回通っていましたが、医師は熱心に関わってくれず、処方を全然変えませんでした。
転院先を探した方法
体調が不安定で職場復帰支援施設に通所するのもままならない中、施設の職員から転地療法施設を紹介されました。
奈良県の居住型施設に移ることになり、病院も変わることに。
病院にこだわりはなかったので、主治医にもそのまま理由を伝えて紹介状をもらいました。
転院の結果
自分と施設スタッフ、医師の三人四脚で減薬を決意。
徐々に薬を減らした結果、東京にいたときに悩んでいた月1~2回の躁状態がほとんどなくなりました。
医師は積極的に薬の変更を検討してくれて、不満はありません。
自分が正しい認識を持ち、医師と協力するのが大切だと思います。
今回の調査に協力いただいた皆さま、アンケート実施に必要な準備に携わっていただいたすべての皆さまにお礼申し上げます。
今回のアンケート結果の詳細は『こころの科学増刊(日本評論社)』に収録された「当事者が語るセカンドオピニオン」でご覧いただくことができます。
編集長松浦が、当事者としての経験・見解を述べた上で、アンケートの詳細を解説しています。
回答者の内訳、インタビューに回答いただいた2名の方の治療の詳細や当事者ならではの体験談も掲載されています。
セカンドオピニオンを検討する際、参考となり得る情報が掲載されていますので、ぜひご一読いただければ幸いです。
[執筆/野木奈都、校正・校閲/二宮 ひとみ(臨床心理士・公認心理師)、編集/山口恵里佳]
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ライター/編集者/ヨガ講師
1994年生まれ。双極性障害やうつ病の友人との交流を機に、精神疾患に関する勉強と記事執筆を開始。ヨガ講師として人の心身に向き合う活動にも取り組む。