『躁うつでも、なんとか生きています。』原作者・高松さんが語る、書籍化の裏側と“双極症×働く”

公開日: 2025.5.16

双極症をテーマにしたコミックエッセイ『躁うつでも、なんとか生きています。』の出版を記念して開催されたイベントに、当メディア編集長・松浦が登壇しました。

原作者の高松さんは、双極症の当事者であり、ライターや連句作家としても活動されています。

イベント前にお時間をいただき、書籍が生まれるまでのこと、就職活動で感じたこと、そして双極症との向き合い方まで、ざっくばらんにお話をうかがいました。

〈聞き手=松浦秀俊(双極はたらくラボ編集長)〉

プロフィール 高松霞(たかまつ・かすみ)

双極症Ⅱ型当事者。ライター。連句人。草門会に参加。2012年より未経験者のためのワークショップ「連句ゆるり」他、連句関係のイベントを多数行う。2021年より門野優と立ち上げた連句総合サイト「連句新聞」を運営。現在連句入門書を執筆中。

※記事で紹介した商品を購入すると、売上の一部が双極はたらくラボに還元されることがあります。

『躁うつでも、なんとか生きています。』出版のきっかけ

松浦
松浦

今回は高松さんをお招きして、出版イベント前にインタビューできればと思います。高松さん、よろしくお願いします。簡単に自己紹介をお願いしてもいいですか?

高松さん
高松さん

高松霞です。ライターをやりながら、連句という文芸をやっています。ライターとしての得意分野は短詩(短歌・俳句・川柳)の書評。イベントレポやインタビュー、エッセイも書きます。

※連句とは、五・七・五の長句と七・七の短句を交互に詠みながら、複数人で句をつないでいくもの

松浦
松浦

今はライターのお仕事一本で活動されているんですか?

高松さん
高松さん

アルバイトをしながら、ライターとして原稿も書いています。ちょうど今、就職活動も進めているところです。

松浦
松浦

なるほど。いろいろとお話を伺いたいのですが、まずは今回、書籍を出すことになったきっかけから教えていただけますか?

高松さん
高松さん

もともと担当してくれていた編集者の方が「ウォーカープラス」というKADOKAWAの漫画サイトに異動することになったんです。それで「何か企画を出したら見てもらえますか?」と聞いてみたら、「いいですよ」と言ってもらえて。

それまで書き溜めていた、躁うつに関するエッセイを送ったら、「OKです」という感じで話が進みました。

松浦
松浦

今回の書籍は特徴のある内容ですよね。

高松さん
高松さん

そうですね。

その編集さんが、私が短歌や俳句や川柳に詳しいことを知っていたので、「エッセイにそういう要素も入れられませんか?」って提案してくれました。

最初は「どうやって入れるんだろう?」と試行錯誤しながらでしたが、少しずつ形になっていきました。

松浦
松浦

Web連載から始まって、それが書籍になったんですよね?

高松さん
高松さん

はい。連載が始まったら、予想以上に反響が大きくて、400万PVを超えたんです。

それで担当さんから「書籍化の企画を会議にかけます」「通します」って連絡が来て。「よろしくお願いします」って返したら、「400万PVあるんで」って(笑)。

「あ、そんな感じで決まるんだ」って思いましたね。

松浦
松浦

大きな数字があると、企画は通っちゃうんですね(笑)

“1,400字”が漫画の原案に

松浦
松浦

実際、働きながら執筆されていたわけですよね?

高松さん
高松さん

そうですね。

松浦
松浦

私も働きながら書いた経験があるので、大変さはよくわかるんですけど、高松さんはどうでしたか?

高松さん
高松さん

一話をだいたい1,400字にしてたんですよ。以前、書評をたくさん書いていた時期があって、書評ってだいたい1,400〜1,500字くらいなので、そのくらいの分量には慣れてたんです。

松浦
松浦

あー、なるほど。

高松さん
高松さん

なので、「ああしよう、こうしよう」って構想を練って、「よし、書こう」と決めたら、だいたい2時間くらいで書けます。

松浦
松浦

2時間で!?

高松さん
高松さん

書けるんです(笑)

松浦
松浦

早い(笑)。

ちなみに漫画の原案は別にあるんですか?それともその文章がそのまま?

高松さん
高松さん

1,400字の原稿をそのまま使っていただいてます。私は「ここをこうしてください」ってちょっと補足する程度で、ほとんど加筆してないんです。面白い作業でしたね。

漫画を担当された桜田洋さんが、霊感のようなものがあるらしく、「私が見たまま」を描いてくれるんですよ。

松浦
松浦

すごい!イメージが伝わるんですね。

高松さん
高松さん

ほんとに「なんでわかるの!?」って思うくらい、細かいところまで描いてくださって。自分で読んでいても面白かったです。

「まずは寝る」が双極症とつきあう工夫

松浦
松浦

そういう意味では、働きながら書くこと自体は、そこまでしんどくはなかったですか?

高松さん
高松さん

そうですね。

今はアルバイトなんですけど、それまで人材派遣のコールセンターで正社員として働いていて。正社員をやりながら、フリーでライターとしても活動していた時期が何年かあったんですけど、今よりもその頃のほうが正直つらかったですね。

松浦
松浦

その頃は、双極症の症状も結構出ていたんですか?

高松さん
高松さん

出てましたね。躁状態でパーンって、一気に上がっちゃってました。

松浦
松浦

今は、何か意識してやっている対処法はありますか?

高松さん
高松さん

とにかく寝ることですね。まずは睡眠をちゃんと取る。何時に寝るかを毎日決めていて、夜の12時から午前1時のあいだに寝て、8時間は寝るようにしています。

そのおかげで、以前よりも躁うつの波がだいぶ落ち着いてきたなと感じています。

オープンでは通らず、クローズにも迷う就活

松浦
松浦

先ほど就活の話もありましたが、今はどういうお仕事を探しているんですか?

高松さん
高松さん

転職エージェントにいくつか登録しているんですが、紹介されるのは事務の仕事ばかりで。

松浦
松浦

オフィスで働く仕事ですね。

高松さん
高松さん

そうそう。でもそれがうまく選考を通過しなくて。ライティングの仕事もあったんですけど、それもダメで……。

困って、「接客の仕事を探そうかな」と思って、少し方向性を変えようとしてるところです。

松浦
松浦

雇用形態としては、障害者雇用を考えてるんですか?

高松さん
高松さん

うーん….。オープンにすると、アルバイトですらなかなか通らないんですよね。だから最近は、「クローズにした方がいいのかも…」と考えることもあります。とはいえ、知り合いからは「クローズはまずいんじゃない?」とも言われていて。

障害者雇用枠でも身体障害者の方のほうがやっぱり通りやすくて……。

松浦
松浦

難しいですよね。でも、精神の障害者雇用も広がってきてはいるんですよ。

高松さん
高松さん

そうなんですか?

松浦
松浦

企業が従業員数に応じて障害のある方の雇用をする割合(法定雇用率)が上がっていて、障害者雇用全体は少しずつ拡大しています。いろんなところに当たってみれば、可能性はあると思いますよ。

高松さん
高松さん

そう言っていただけるのはありがたいですけど……今のところ30社ぐらい落ちてて、ほんと、つらさしかない。「一回考えるのやめようかな」って思ったり、「いや、やっぱりやろう」って思ったり。

そういうモヤモヤは、常にありますね。

本の魅力は“絵の可愛さ”と“俳句と物語の調和”

松浦
松浦

最後に書籍の話に戻りますが、あらためてこの本のアピールポイントってありますか?

高松さん
高松さん

アピールポイント?……絵が可愛い!

松浦
松浦

確かに(笑)

高松さん
高松さん

本当に可愛いんですよ。しかも、ところどころにギャグも入っていて、重くなりすぎず、テンポよく読めるように仕上がってます。

松浦
松浦

そこは読みやすさにもつながってますよね。

高松さん
高松さん

それから、俳句の選定もすごくこだわっていて。西川火尖さんと松本てふこさんという俳人の方にお願いして、物語との調和を考えて選んでもらったんです。俳句と物語がきれいにつながっているところも、ぜひ楽しんでほしいです。

松浦
松浦

ちなみに私も、ちょっと登場させていただいていて。中身はここでは見せられないですけど、ぜひ読んでもらえたら嬉しいです。

『躁うつでもなんとか生きてます。 ~俳句と私が転がりながら歩むまで~』

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■原案・高松霞 X(旧Twitter):@kasumi_tkmt
■漫画・桜田洋 X(旧Twitter):@sakurada_you Instagram:@sakurada_you
■出版社:KADOKAWA

【監修:二宮ひとみ(臨床心理士・公認心理師)】

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