
22歳で双極性障害と診断 俳優・劇作家として活動するまでのキャリア
今回は双極性障害Ⅱ型の当事者で俳優・劇作家の板倉さんインタビュー。
行動力で生きてきたと語る板倉さんに、「双極性障害の影響とキャリア」をお聞きしました。
〈聞き手=松浦秀俊(双極はたらくラボ編集長)〉

プロフィール 板倉さん
・双極性障害Ⅱ型
・舞台役者。劇作家。演出家。
・演劇ユニット「Lumeto」代表
・双極性障害をテーマにした「息のできる場所」という舞台を主催
目次
双極性障害と付き合いながら俳優の道へ

双極性障害の発症はいつ頃ですか。

おそらく中学2年生だと思います。
自殺しようと思って家に火をつけたことがあったんですが、今思うと躁状態だったかな、と。
当時は、うつ病や自律神経失調症と診断されましたが。


そこから正式に双極性障害と診断されたのはいつなんでしょうか。

22歳の時です。
仲のいい友人に当たるようになってきてしまったのがきっかけで、現在お世話になっている病院に行きました。
それまで、活動的になったり母親に当たることはあっても、友人に当たったことはなかったので、「この状態はまずいから、きちんと直さないといけない」と思ったんです。

ということは、初診ですんなり診断されたと?

そうなんです。
凄い先生で、私が入った瞬間にいきなり「君は多分、双極性障害だと思うよ」って言われて。
気分の上がり下がりを少しだけ話したのと、顔や様子で判断されたんだと思います。
その後に光トポグラフィー検査※をして、「やっぱり双極性障害だね」という流れでした。
※光トポグラフィー検査:うつ症状の原因になっている精神疾患の鑑別診断の補助をするためのもの


そんなこともあるんですね。
22歳というと、診断を受けた時は学生でしたか。

お芝居の専門学校に通っていて、ちょうど卒業するタイミングでした。

その頃から「俳優になりたい」という想いがあったんですか。

もともと自殺願望があった人間なので、ちょっとでも楽しいと思えることをやろうと思って、高校卒業を機に北海道から東京に来たんです。
最初は歌の専門学校に入ったんですけど、先生と合わなくて。
先生は嫌だけど北海道には帰りたくないと思っている中で、「舞台楽しそうだから、お芝居の学校入っちゃおう!」と気軽な感じで始めたのが、今まで続いています(笑)。

すごい…。

行動力だけで生きてきました。


行動が、俳優業につながっているんですね。
学校卒業後は、そのままお芝居を仕事にするんですか?

卒業後の1年間何もしてない時期があり、その後劇団に入りました。
ただ、舞台は全然お金にならないもので。
収入がほぼなかったので、バイトをしていました。
舞台の稽古が、大体13時から22時までだったので、その後朝までバイトをする生活でしたね。

朝まで…!寝る時間が全然なかったんじゃないですか。

3時間ぐらいでしたね。
双極性障害の方は、規則正しい生活をしたほうがいいと言われるじゃないですか。
それとは違う生活をしていたので、ぶっ倒れることもしばしばで。
でもこの生活を辞めるのは違うという感覚があったので、身体に鞭打って続けていました。

どれくらいまで続けたんですか。

劇団に行っていなかった時期もありますが、計4年間ぐらいです。
その後はどこにも所属しないで、いろんな所のオーディションを受けて出演してたんですけど、2017年に劇団を自分で立ち上げることになったんです。
劇団の立ち上げから双極性障害をテーマにした作品が生まれるまで

劇団を自分で立ち上げるって、結構大変なことだと思うんですが、どういうきっかけなんですか。

自分で舞台の脚本を書くことになったからですね。
やりたかった既成作品があったので劇場を押さえていたんですけど、他の方に1年間の独占契約をされてしまって、その作品ができないことになったんです。
上演する作品がないから「どうしよう…」と悩んでいた時に、何人かに「書いてみれば」と言われている内に「書いちゃおうか」とやる気になりました。


作品を自分で書くことと、劇団を立ち上げることはイコールになるんですか。

自分の書いた作品をやるために劇団を作る人が多いと思います。
私の場合は自分がやりたかったのではなく、必要に駆られてなんですけどね。

私が観劇した「息のできる場所」という作品は、双極性障害がテーマでした。
どうして双極性障害をテーマにしようと思ったんですか。
自分のことを書いて出すってそれなりにパワーがいると思うんです。反響が刺激になったりもしますし。

そもそも作品を書きたいと思って書いてる人間じゃなかったので、「自分に何が書けるんだろう…」と考えたんです。
でも、全然浮かんでこなかったので、「そもそも作家や画家は、どうして書きたいという衝動が生まれるのだろう」と疑問に思って調べたら、「ハイパーグラフィア(衝動が抑えられず書きまくること)」という言葉に出会って。
詳しく調べてみると、双極性障害の人にもハイパーグラフィアがいるのを知りました。
面白そうな題材だし、自分にも当てはまるテーマだったので書いてみようと思ったんです。

実際に作品を見て、当事者の方が舞台として表現しているのが衝撃的でしたし、感動したので、ぜひまたやっていただきたいなと思います。
好きなことをやるためにマッサージ業を収入源に

板倉さんは、俳優業以外にマッサージの仕事もしているんですよね。

もう10年ぐらいやっていますね。
収入の8~9割がマッサージの仕事なので、メインの収入源です。


マッサージの仕事は、どのような働き方なんですか。

深夜に働いています。
店舗型と出張型の2つ在籍していて、店舗型は午前3時まで、出張型は午前4時までにしています。

体調的には問題なく働けるものですか。

シフトの融通が利きやすいので、体調がすぐれないときは仕事量を調節できるのが良い点で。
双極性障害の方の中には、やりすぎてしまう方も多いと思うんです。
私も過去に、飲食でバイトしていた時にやりすぎて、どんどん仕事を任されるという状態になって。
その働き方だと、長くても2年で爆発しちゃう。やり過ぎて溜め込んで、いきなり職場に行けなくなっちゃう。
今の体調に合わせて仕事量を調節できる働き方は、自分には合ってるんだろうなと思います。


俳優業がやりたいことだとすると、マッサージの仕事はお金を得るための手段だと思います。
両方やることが自分に合ってるのか、本当は1つに絞りたいのか、どう考えていますか。

お芝居だけで食べれたら幸せなんだろうなとも思いますが、今は家庭も大事にしたい。
何が一番自分の理想なのかは変わってきていると思います。
がむしゃらに自分の好きなことをやれていればいいかな。
体調を崩さないための工夫

働く上で体調を崩さないように工夫してることはありますか。

マッサージの仕事がある時は、だいたい夜中の2時〜5時の間に帰宅しますが、睡眠時間を最低でも5時間は取るようにしています。
睡眠時間が5時間を切ると、症状が顕著にでるようになってきたんですよね。


寝る時間が遅いと大変なんじゃないかと思ったのですが、リズムを一定にされているんですね。
他にもありますか?

私、スケジュールを入れたくなっちゃう人で。
夫に怒られるんですが、入れすぎてしまうんですよね。
でも、自分の中で本当にまずい状態だと思ったら、何もせずに寝るようにしています。

寝ることで、自分を守ると。大事な判断ですね。
双極性障害の症状は演技に影響を与える?

演技に双極性障害の症状が影響を及ぼすことはあるのでしょうか。
例えば、気分が高い時に舞台に上がったら、表現に出ちゃうとか。

症状が一番出やすいのが家の中なので、外に出るとスイッチが変わって平気なんです。
どうしてもうつ状態で芝居に集中できないときもありますが、病気じゃない人も何か嫌なことがあったら集中できないと思うので、「しょうがない」と思うようにしています。
軽躁状態でお芝居はしたことないですね。

舞台の上は注目も浴びるしライトが強いので、気分が上がることもあるのかなと。


稽古の時だったらあるかもしれないですけど、本番では人が見ているからか、役として違う人になっているからなのか、ハイになることはなかったですね。

最後に、表現活動や俳優に興味がある双極性障害当事者に向けて、伝えたいことはありますか。

何か必要があって表現活動や俳優に興味を持つと思うので、やってみたらいいんじゃないかなと。
生計を立てようとすると大変ですが、会社で働きながら社会人劇団でやっている人もいて、そういう楽しみ方もありますし。
お芝居は、自分を外に出す作業をするものなので、発散できると思います。色々挑戦してみてください。
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双極はたらくラボWebメディア責任者
1999年東京都生まれ。2022年に新卒社員としてリヴァへ入社。