精神科訪問看護の家族支援とは

双極性障害当事者の家族・支援者に向けた精神科訪問看護 家族支援の方法

公開日: 2023.11.30
最終更新日: 2024.3.29

「訪問看護ステーションみのり」統括所長として、精神科訪問看護に携わる小瀬古伸幸(こせこ・のぶゆき)さん。

精神疾患当事者へのサポートだけでなく、家族や支援者に向けた「家族支援」にも尽力されています。

今回は、精神科訪問看護の利用を検討する当事者のご家族や支援者に、家族支援について解説いただきました。

〈聞き手=松浦秀俊(双極はたらくラボ編集長)〉

双極性障害の当事者に向けた精神科訪問看護の解説記事はこちら

プロフィール 小瀬古伸幸

「訪問看護ステーションみのり」統括所長 / 精神科認定看護師。
精神科訪問看護に携わり、現在は訪問型の家族支援を中心に活動している。
WRAPファシリテーターや、執筆者としても活動中。
主著は『精神疾患をもつ人を、病院でない所で支援するときにまず読む本』。

※記事で紹介した商品を購入すると、売上の一部が双極はたらくラボに還元されることがあります。

精神科訪問看護での家族支援の基本は「家族の心をしっかりと受け止める」

松浦
松浦

精神科訪問看護を検討している方の、家族に向けた支援方法について教えてください。

小瀬古さん
小瀬古さん

基本のスタンスは、ご家族が今までやってきたことを絶対に否定しないことです。

苦労しながら「何とかしよう」と努力されてきたはずなので、まずはお話を伺い、受け止めていきます。

双極性障害の場合、ご本人がうつ状態のときよりも、躁・軽躁状態のときにご家族は困るケースが多いです。

松浦
松浦

この場合、ご家族をどうサポートされるのでしょうか。

小瀬古さん
小瀬古さん

支援者がよくやりがちなのは、「ご本人の症状や状態を分かってあげてください」と説明することです。

ただ、ご家族は自主的に調べて、躁状態のこともよく分かっているはず。

分かった状態で対応してきているので、私たちはまずその大変さを受け止めて、お話を聞いていきます。

小瀬古さん
小瀬古さん

ご家族は、自分の話を聞いてもらう機会が非常に少ないものです。

双極性障害について語り合える家族会も少ないし、友達や親戚にも気軽に話せません。

小さなお子さんを抱えながら、悩みを溜め込んでいるケースも多いです。

誰にも話せないまま、いろいろな思いが蓄積されていき、しんどくなるんですよ。

松浦
松浦

そうですよね。

小瀬古さん
小瀬古さん

そこで、まずは気持ちを解きほぐすためにお話を聞きます。

「大変だったのではありませんか」と聞いていくと、30分~1時間くらいかけて思いを語ってくれます。

松浦
松浦

現状や悩みについて、存分に語っていただくのですね。

では、話を聞いた後はどう対応していくのでしょうか。

小瀬古さん
小瀬古さん

支援の説明をします。

よくご家族から「(ご本人が)軽躁状態のとき、病院に通ってほしいけれど嫌がっている」と相談をいただきます。

躁状態になると、他者の言葉の受け入れが難しくなることもあります。

その状態では、周囲の言葉はあまり耳に入らないし、通院自体を無意味だと考えてしまう方も多いんですね。

松浦
松浦

はい。

小瀬古さん
小瀬古さん

そこでお話しするのが「身体の心配を伝えてほしい」ということです。

ご本人はいつもよりはるかに活動的な状態で、睡眠も不足しているかもしれない。

だから「心配なので一度、一緒に主治医に診てもらいに行こう」と伝えていただくようにお願いしています。

ただし、精神科への通院を嫌がるからといって「内科に行こう」と嘘をついて、精神科に連れて行くのは避けてください。

きちんと精神科の主治医に診てもらうようにしましょう。

松浦
松浦

身体の心配を伝えるのはいいですね。

「軽躁っぽいから精神科に通おうよ」と言われると、事実を否定したくなります。

でも睡眠不足なのは事実で、身体の不調はうっすら自覚しているので、受診の動機にはなりやすいかもしれません。

体調が優れない場合に、元々通っている精神科を受診するのは自然ですし、伝え方の工夫としてはいいと思いました。

精神科訪問看護では双極性障害当事者に手の内を見せながら家族とも本質的な話をする

松浦
松浦

精神科訪問看護での家族支援は、医療の枠組みで提供されているんですか?

小瀬古さん
小瀬古さん

はい。通常の訪問看護は認められていませんが、精神科訪問看護では医療の枠組みで家族支援が認められています。

注意点は、ご本人のお住まいにご家族もいる必要があることです。

同居の必要はありませんが、訪問するのはご本人の自宅であり、ご家族の自宅に伺うことはできません

松浦
松浦

なるほど。ご本人を対象とした支援のなかで、家族支援も行えるということですね。

他にも気を付けることはありますか?

小瀬古さん
小瀬古さん

よくある事例が、ご本人がいない場所で、訪問看護師とご家族がコソコソ話してしまうことです。

それをご本人に聞かれて、気まずい空気になってしまった場合、私の経験上あまりうまく支援できませんでしたね。

「あいつら(家族)、医療者に告げ口してるんじゃないか」と不信感をあおってしまうんです。

松浦
松浦

確かにそうですね。

小瀬古さん
小瀬古さん

でも支援するなかで、ご家族が気を遣わずに本質的な話ができるよう、ご本人のいない場所でお話ししたいときがあります。

その際はご本人に「〇〇なので、ご家族と20分ほどお話しさせてもらっていいですか。大まかな内容は後でお伝えします」と退席してもらいます。

ケースバイケースでご本人を含め3者でお話をすることもありますが、ポイントはご本人にちゃんと手の内を見せていくことですね。

松浦
松浦

なるほど。当事者としても納得できる伝え方でした。

精神科訪問看護の家族支援サービスの探し方

松浦
松浦

最後に、精神科訪問看護の家族支援サービスの探し方を教えてください。

小瀬古さん
小瀬古さん

現在、私が提供しているのがメリデン版訪問家族支援」という、家族支援も含む看護プロジェクトです。

インターネットで名前を検索すると、一般社団法人 ジャパンファミリープロジェクトの公式サイトが出てきます。
アクセスした後は、下にスクロールしていってください。

家族支援の研修を履修したファミリーワーカーの名前と所属先の記載箇所があるので、ご相談いただくのは1つの手です。

小瀬古さん
小瀬古さん

ファミリーワーカーのなかには、行政機関や訪問看護団体、病院に所属している人もいます。

いずれも家族支援の基本的な研修を受けている方々です。

どのような形で支援しているのか気になる方は、一度見ていただけると、参考になるかと思います。

インタビューの全容は動画にて!

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