双極性障害の休職から復職まで 過ごし方のポイント

双極性障害の休職から復職まで 過ごし方のポイント

公開日:2021.10.21
最終更新日: 2024.3.29

双極性障害の躁状態の時期に働きすぎてしまい、その反動のうつ状態による欠勤から休職に至ることはよくあります。

また休息によって回復したのちに躁状態となり、復職しても気持ちのままに働き過ぎて再休職する人もいます。

他にも、うつ病として治療を続けてきたものの、なかなか改善が見られずに双極性障害と診断名が変更になったという話はよく聞きます。

しかし、うつ病から双極性障害と診断名は変わったけれども何がどう違うのか?あまりよく分からないまま治療とリハビリを続けている方も多いのではないでしょうか。

そうした様々な局面で的確な判断や行動をするためにも、休職をしてから復職するまで、どのタイミングで何をすればいいかのイメージをつかんでおくことが大切です。

この記事では双極性障害の発症から復職までの標準的な流れを、それぞれの時期に分けて説明します。

双極性障害とは

双極性障害はハイテンションで活動的な躁(そう)状態と、憂うつで無気力なうつ状態を繰り返す病気です。

躁状態になると眠らなくても活発に活動できたり、次々にアイデアが浮かんだり、大きな買い物やギャンブルなどで散財するといった行動が見られます。

双極性障害には激しい躁状態とうつ状態がある双極性障害Ⅰ型と、軽い躁的な状態(軽躁状態)とうつ状態がある双極性障害Ⅱ型があります。

画像 漫画「松浦さんの双極ライフ」より

Ⅰ型は躁状態の時の程度が激しく「口数が多く、話が止まらない」「力がみなぎり、何でもできる気がする」「金銭を無計画に浪費するようになる」など、明らかに行き過ぎた行動があるため周囲も気づきやすいという特徴があります。

一方Ⅱ型は、長いうつの症状(喜怒哀楽を表現しなくなる、落ち込んでいるなど)が続いている間に、ごく短い期間に軽い躁状態があり、その後は再びうつの症状が続くという病気です。

躁状態が軽度でⅠ型のように激しい症状がなく、その期間も数日間程度と短いため本人や周囲が気づかなかったり、うつ病と間違われやすいという特徴があります。

双極性障害Ⅰ型とⅡ型の「躁状態」を比べたときにⅠ型に比べてⅡ型の方がやや軽いため、Ⅱ型の方が軽くて治りやすいと思う方もいるかもしれません。

しかし、Ⅱ型はⅠ型に比べ目立つ特徴を把握しづらく体調や気分をコントロールしにくいという難しさがあるため、必ずしもⅡ型の方が軽い病気であるというわけではありません。

双極性障害の症状については「双極性障害(躁うつ病)ってどんな病気?”躁状態””うつ状態”とは?(リヴァマガ)」の記事も参考にしてください。

うつ病との違い

双極性障害は一般的には「躁うつ病」という名前で知られています。うつ病に似ていますが両者はまったく違う病気であり、治療薬も異なります。

うつ病は気分の落ち込みや不眠、やる気がなくなる等のうつ症状だけが見られますが、双極性障害はうつ状態と躁状態、または軽躁状態を繰り返す病気です。

的確な診断のためにも診察時には過去に躁状態(疲れを感じず、眠らなくても平気になったり、活動的でじっとしていられないなど)になったことがなかったか、家族や周りの方の意見も聞いて医師に正しく伝えましょう。

重要なのは「各段階の過ごし方」

再発の主な原因として、しばらく薬を飲んで調子が整い始めると「もう治ったから」と言って服薬をやめてしまったり、「これだけ調子が良いんだから、もう通院しなくても大丈夫だろう」と考えて通院をやめてしまうことが挙げられます。

そういったことが起こらないよう双極性障害の発症や休職から復職するまでに、どの段階で何をすればいいのかを前もってイメージをつかんでおくことが大切です。

休職から復職までの3つの段階

双極性障害の発症は、本人ではなく職場の同僚や家族などが「どうもいつものあの人とは違う」「ちょっとおかしいのでは?」と異変や症状に気づいて発覚することが多いようです。

「【漫画】就職・転職時に起こりがちな困りごと – 松浦さんの双極ライフ #08」より

症状が発覚して休職し、治療を始めたこの時期を「急性期」といいます。

双極性障害Ⅰ型はⅡ型と比較して躁の症状が強く表れます。気分が高ぶって誰かれかまわず話しかけたり、まったく眠らずに動き回ったりするなど明らかに行き過ぎた行動があるため、周囲も気付きやすいという特徴があります。

その結果、治療のために入院が必要となり休職するというパターンが多く見られます。

一方、双極性障害Ⅱ型はいつもよりも妙に活動的で周りの人から「何だかあの人らしくない」「元気過ぎる」と思われるような軽躁状態の後に鬱状態になり、その時に受診し休職に至ることが多いようです。

その後、休養や治療を経て徐々に症状が安定してくる時期を「回復期」といいますが「そろそろ会社に戻りたい」と思い始めるようになるのもこの頃です。

治療を続けながら生活リズムを整えていくことが、この時期の過ごし方のポイントです。

そうしてある程度体調が安定してきたら「リハビリ通勤」や「産業医や上司との面談」など、復職に向けた準備を行う「直前期」を迎え、いよいよ復職となります。

大まかに説明すると、このような流れになります。 

それでは、各段階における過ごし方やポイントについてご紹介します。

「急性期」の過ごし方やポイント

躁状態とうつ状態どちらにも共通していることが、しっかり服薬して休養することです。

躁状態は脳がオーバーヒートした状態であり、刺激に非常に敏感になり、刺激、興奮、悪化の悪循環になりやすくなっています。

(参考:急性期(躁状態)の治療 府中こころのクリニック

そのため、動きたくてもあえて休んで悪循環を断つことが大切です。

「【漫画】双極性障害を受け入れたきっかけ – 松浦さんの双極ライフ #04」より

うつ状態のときも考え過ぎることで症状が悪化してしまうため、まず頭をしっかり休ませるために休養します。

状態によって薬や治療方針が変わるため日頃から気分の変化や睡眠状態を記録したり、これまでに躁状態・うつ状態になったときの状況などを書きとめておき、主治医に伝えましょう。

「回復期」の過ごし方やポイント

治療の効果が出ると急性期の状態の多くは段々と収まってきます。

その後は再発を防ぐために治療を続け、いかに自分で自分の病状をうまく整えていくかがポイントになります。

まず前提として、再発予防のための薬物療法の継続が必要です。中断すると重度の症状が起こる危険が非常に強いため、注意が必要です。

次に生活リズムの調整です。症状が安定していても多少の気分のゆらぎは出てくるため、生活を調整して未然に整えることが重要です。

うつ気味なら億劫だけどあえて動いてみたり、逆に躁気味なら動きたくてもあえて休養することを意識することが有効です。

双極性障害の人が生活リズムを一定にするためのツールとしてソーシャル・リズム・メトリック(SRM)があります。

日本うつ病学会HP 双極性障害委員会 ソーシャル・リズム・メトリック より

これは起床、活動開始、就寝といった日々の主要な活動の時間を一定にすること、また人との接触による刺激量を記録して可視化することで体調を整えるものです。

資料は日本うつ病学会のサイトからダウンロードすることができるので、活用してみてください。

「【漫画】左腕に光るモノ~セルフモニタリング~ – 松浦さんの双極ライフ #05」より

また、画像のようなデジタル腕時計である「スマートウォッチ」を活用した記録も有効です。

生活リズムの調整もできてきたら病気について学んでみましょう。

再発予防は効果が目に見えにくいからこそ自分で病気のことを勉強し、なぜ治療を続けることが必要なのかを理解しておくことが大切です。

また過去に再発した時を振り返って、再発を引き起こしやすいストレスと最初に現れる症状について、家族でよく話し合っておきましょう。

回復期に入ったらリワークの検討も

体調が安定し回復期に入ってくると、復職への焦りを感じやすくなる人も多いでしょう。

しかし日常生活を問題なく送れるようになっていても、休職前のように職場での仕事をするにはまだ高い“階段”が待ち受けている状態といえるでしょう。

そうした階段を上りやすくするのが、リワークなどの復職支援サービスになります。

「【漫画】双極性障害を受け入れたきっかけ – 松浦さんの双極ライフ #04」より

こうしたサービスを利用することにより、職場のような心身の負荷がかかりやすい状況での対処法を身に付けたり、決まった場所に毎日通うことで生活リズムを整えたりすることができます。

リワークでは他にも、会社で働いていた時に自分が何に対してストレスを感じていたか、そのストレスをどうすれば軽減できるかを振り返り対策を検討したり自分の思考や考え方のクセに目を向けてみる機会もあります。

会社を離れている時期に自分を客観視してみながら、出来る範囲で少しずつ振り返ってみましょう。

(参考:「リワークとは何?」リワークの意味や効果、具体的な内容など リヴァマガ

 「直前期」の過ごし方やポイント

復職に向けた準備が整ってきたら、いよいよ(復職の)直前期となります。

直前期で大切なことは、これまでの自分を振り返り、回復期に取り組んだことを自分なりに整理することです。

復職時に産業医や上司との面談がある場合には、背伸びをせずに自分が回復期から取り組んできたことや直前期にまとめたことなどを話しましょう。

整理のポイントとしては、

が挙げられます。

この中で特に大切なのが「休職前の自分の振り返り」です。

「【漫画】双極性障害の状態を理解する4つの記録 – 松浦さんの双極ライフ #12」より

回復期の後半から直前期にかけて、本人なりの「(軽)躁」に転じる「きっかけ」や「自身の変化」を整理することが必要です。

どんな出来事や環境がストレスの要因になったのか、その結果自身にどんな変化があったのかを振り返ってみましょう。

双極性障害のきっかけとなるストレス反応は、落ち込んだり眠れなくなるなどの鬱症状だけではありません。

例えば無意識に口笛を吹いている、毎日食べていたお菓子に興味がなくなる、SNSの投稿数が増え始めるといった、躁になる手前の自分なりのサインが出ていなかったかを考えてみたり、周囲の人に聞いてみましょう。

「【漫画】妻の気づき – 松浦さんの双極ライフ #03」より

また産業医や上司との面談の際には「自分の今の状態で何ができて何ができないか」「周囲からどのようなサポートがあると皆と同じ(あるいは近い)状態で働くことができるか」を説明できるようにしておくと、自分も職場の人も不安が軽減されます。

復職だけがゴールではない

うつ病は「うつ症状を良くする」ことが治療目標ですが、双極性障害では、「躁・うつの波をどうやってコントロールするか」が最大の治療目標です。

なるべく生活リズムを乱さないように注意して再発の予防に努めるとともに、復職にあたっては主治医や上司とよく相談して段階的に勤務時間や仕事内容を増やしていくことをお勧めします。

また、復職をする場合は「なぜその会社に復職するのか」もう一度考えてみるのも大切です。

「復職期限が迫っているから」「生活があるから」と考えると復職だけがゴールのように思えるでしょうが、復職は再スタートでもあり、その位置の選択肢は何もその会社だけではありません。

「自分には他に選択肢なんてない」と思う人もいるでしょう。

しかし、休職期間を活かして興味のある仕事について調べたり様々な人の話を聞くなど、視野を広げるためにできることはあるはずです。

色々な選択肢や可能性を検討した上で、自分自身が復職を選択したということが大切です。

最後に、双極はたらくラボの運営元が提供する休職・離職者向けサービス「リヴァトレ」では、双極性障害の方に特化した再発予防プログラムを始めとして、復職や再就職を望む双極性障害の人が自分らしく働けるようになるためのサポートをしています。

オンライン説明会や無料体験を実施していますので、ご興味があればチェックしてみてください。

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