双極性障害で「転職してもしんどい」とならないために。当事者の職歴とポイント3つ

双極性障害で「転職してもしんどい」とならないために。当事者の職歴とポイント3つ

公開日:2022.10.4
最終更新日: 2024.3.29

2022年3月30日(水)に無料のオンラインイベント「双極はたらくラボ fes’22」を開催しました。

双極性障害で働くヒントがみつかるイベント」として、双極性障害Ⅱ型の当事者3名が「働く」をテーマに対話。

ウェビナー(Webセミナー)で行われた対話をまとめた記事を、3つのテーマに分けてお届けします。

今回は1つ目のテーマ「職歴と双極性障害 振り返って思うこと・他の人の気になる点」についてです。

対話者3名のプロフィール

プロフィール トコさん

・フリーランス、女性(業務委託/取引先には病気のことはクローズ)
・歯科医師(アルバイト)、地方厚生局の医系技官(国家公務員)、事務サポート(障害者雇用)、事務系専門職(正社員)などとして勤務
・2022年1月~フリーランスとして活動
・双極性障害だが躁の症状はそこまで激しくなく、自身は「おそらく双極Ⅱ型」と考えている

プロフィール ばななさん

・官公庁で事務補助、女性、双極性障害Ⅱ型(オープン就労)
・看護学校卒業後、総合病院に2年勤務
・結婚後、産後うつのため専業主婦となる。看護師として復職後は育児や仕事で忙しく、4年間休職をくり返す
・精神科訪問看護などで働くが1年以内に退職
・介護デイサービスに5年間従事した後に現職

プロフィール 松浦秀俊 (Twitter @bipolar_peer )

・「双極性障害(躁うつ病)で働くヒントがみつかる」をコンセプトとするWebメディア「双極はたらくラボ」編集長
・休職/離職者支援「リヴァトレ」の支援員歴10年
・精神保健福祉士/公認心理師
・双極性障害Ⅱ型の当事者

落ちた状態も含めて長い目で見ながら働く

松浦
松浦

まず1つ目は「職歴と双極性障害 振り返って思うこと・他の人の気になる点」がテーマです。

職歴を振り返って、双極性障害との関係や他の人のケースを見て気になった点を、お互いに話せたらと思います。

職歴を振り返って思ったのは、自分では診断を受けるまでは、症状についてよく分かっていなかったということです。

なんなら「元気なときの自分が本当の自分で、うつの状態の私はおかしいんだ」と思っていました。

躁になったときは周りに迷惑をかけるタイプではなくて、ただパフォーマンスが上がるタイプだったんです。

親からも「あなたは元気でいるのが普通の状態だから、自分の能力が発揮できていないのはもったいない」と言われていました。

周囲からもそういう目で見られていましたが、
診断を受けてやっと「あ、気分が落ちるのも普通なんだ」って気付いたんです。

それまでは「常に元気な状態を目指すのが正しい」と思っていました。
でも「落ちることも含めて考えなければ」と。

落ちた所での対処法も含めて、長い目で見て働かなければならない」と最近になって考えるようになりました。

トコさん
トコさん
松浦
松浦

なるほど。

ただもしも、常に頑張れるはずなのに、たまにだけ頑張っている人を見たら「もっと頑張れよ」と言いたくなると思います。

まだまだ能力を発揮できそうな人が周囲にいたら「あなた、できるはずなのにサボっているよね」と思ってしまうのは当然かもしれません。

その点、診断を受けると本人だけでなく、周囲も「今は落ちている状態だ」と分かることができます。

なので「双極はたらくラボ」の発信もあり、双極性障害が一般的に知られるようになってきたのは本当にありがたいことです。

トコさん
トコさん
松浦
松浦

ちなみに「双極性障害の状態について長い目で見ていこう」と思ったきっかけはありましたか?

難しい仕事に挑戦したんですよね。

「最大パフォーマンスの状態が続けばできる」と思っていましたが、
3か月ぐらいでどうしてもダメになって
しまって。

「何もかも嫌になってしまった」
「あれ、私、できるはずなのにできない」
という状態になって……。

トコさん
トコさん
松浦
松浦

そうだったんですね。

その後はいったん仕事を休職したり、障害者雇用で働いたりもしたんです。

少しずつやる気が出て、また正社員として働き始めたものの、やっぱり同じようにダメになりました。

こうなってしまったのは「頑張りが足りない」のが問題ではなく「躁とうつのリズムによるもの」かなと。

双極性障害の診断も受けたのだし「最大パフォーマンスの私が本来の私というわけではないんだな」と2回目の休職時に気付きました。

実際にしんどい思いもして、やっと「仕方ないんだな」と思えるようになったんです。

でも、やっぱり「悔しいな」という思いは今でもあります。

トコさん
トコさん

「無理なくできること」で生きていく

松浦
松浦

ありがとうございます。
ばななさんはいかがですか?

私は看護師として働いていました。

看護学生時代、精神科がいちばん楽しい実習先だったんですよね。なぜか強い興味を持てる分野でした。

卒業後は一般的な総合病院に入りました。
職場は複数のアラームが鳴ったり、色々な場所から患者さんが出入りしたりする環境で。

様々な音や、やり取りの中で、終わりのない仕事をしていましたが「どうも自分には合わないな」と気付きました。

ばななさん
ばななさん
松浦
松浦

騒がしい職場やゴールの見えない仕事内容が合わなかったんですね。

それが20年ぐらい前の話ですが、「抑うつ症」という病名で診断を受け、強制退場のような形で退職しています。

よくよく考えてみると、そもそも私は看護師になりたくてなったわけではありませんでした。

「看護学校に入っちゃったし、仕方ないから看護師資格を取る」という感覚だったんです。

「やりたくないから中退する」というよりは「どうせなら資格を取ってから辞めてしまえ」というゾーンに入っていました。

また実習先では「ウェーイ」とテンションが上がっていたので、このときに躁状態の素地ができちゃったかなと。

ばななさん
ばななさん
松浦
松浦

ウェーイ(笑)。

働くことについて、職歴と双極性障害の関係で言うと、私は離職や休職の度に消耗して失うものが大きかったと思います。

そこで「削ぎ落としていこう」と考え始めました。

「自分に適した環境は何だろう」とか「資格を活かして生きよう」と考えるのではなく「できる、できている、でき続けられる」と考える。

「深く悩まずに、無理なく手が動かせる職業は何だろう」という感覚に至れば、波もあるにせようまく収まるのではないか。
そういう仮説をもとに行動していますね。

ばななさん
ばななさん
松浦
松浦

なるほど、ありがとうございます。

タイムスケジュールの都合で、私は軽くお話ししますね。

先ほど、ばななさんが言われた「無理なくやれること」というのは私も非常に大事だと思います。

前職まではWebの仕事をメインにしていましたが、昔から「人の話を聞く」ことを自然にやっていました。

今の社会復帰支援の仕事に就いたとき「人の話を聞く」ことが仕事として認められる状態になったんです。

仕事でありながら負荷が少なかったので、やっと「長くやれる仕事にたどり着いたな」と思いました。

ばななさんの「資格」じゃなくて「できること、できていること」で生きていくことについて。

本当に「そういう風に生きたい、やりたくて仕方ない」と感じました。

トコさん
トコさん

トコさん、一緒にやろうよ!

ばななさん
ばななさん

本当にね(笑)!

トコさん
トコさん

低空飛行でエネルギーをためて自分を観察する

「できる」「できている」ことについてですが「躁の状態で私ができる」ことって楽しいんですよね。

でも「躁の状態でできること」を基準にすると、ちょっと落ちた状態の私はついていけないのが悩ましいです。

「できることで生きていく」ことは、本当に心に刻もうと思います。

トコさん
トコさん

どうしても瞬間最大風速の自分は、このときの感覚をすごく覚えているんですよ。

だから、どうしても「快感」というか「アドレナリンも出ているよね」という、躁状態の感覚は覚えていますよね。

この状態は自分で気付きやすいとはいえ、重要なのは「細く長く無理なく」やっていける状態になることです。

低空飛行でエネルギーをためておき「まぁ、この自分ならいいか」ぐらいに設定してみるといいかなと思います。

ばななさん
ばななさん

すごくいいことを聞きました。

トコさん
トコさん

松浦さんが普段されていると仰っていた「セルフモニタリング」と「セルフマネジメント」が基本になっているからかな。

体調などを含めて「自分を管理する」「自分を徹底的に観察する」ことを習慣にしています。

ばななさん
ばななさん

自分を観察するって大事ですね。

トコさん
トコさん

でも限られた項目で観察するしかないので、客観的にどう見られているかは分からないのがお互いの課題ですよね。

ばななさん
ばななさん

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