
「休職か退職以外の選択肢を」双極性障害の当事者が試行錯誤して職場を改善
2022年3月30日(水)に無料のオンラインイベント「双極はたらくラボ fes’22」を開催しました。
「双極性障害で働くヒントがみつかるイベント」として、双極性障害Ⅱ型の当事者3名が「働く」をテーマに対話。
ウェビナー(Webセミナー)で行われた対話をまとめた記事を、3つのテーマに分けてお届けします。
これまで1つ目のテーマ「職歴と双極性障害 振り返って思うこと・他の人の気になる点」、2つ目のテーマ「働く上で困っていること 他の人の困りごとへのアドバイス」についてお届けしました。
今回は最後である3つ目のテーマ「双極性障害と付き合いながら働く工夫」についてです。
前回までの記事はこちら
対話者3名のプロフィール

プロフィール トコさん
・フリーランス、女性(業務委託/取引先には病気のことはクローズ)
・歯科医師(アルバイト)、地方厚生局の医系技官(国家公務員)、事務サポート(障害者雇用)、事務系専門職(正社員)などとして勤務
・2022年1月~フリーランスとして活動
・双極性障害だが躁の症状はそこまで激しくなく、自身は「おそらく双極Ⅱ型」と考えている

プロフィール ばななさん
・官公庁で事務補助、女性、双極性障害Ⅱ型(オープン就労)
・看護学校卒業後、総合病院に2年勤務
・結婚後、産後うつのため専業主婦となる。看護師として復職後は育児や仕事で忙しく、4年間休職をくり返す
・精神科訪問看護などで働くが1年以内に退職
・介護デイサービスに5年間従事した後に現職

プロフィール 松浦秀俊 (Twitter @bipolar_peer )
・「双極性障害(躁うつ病)で働くヒントがみつかる」をコンセプトとするWebメディア「双極はたらくラボ」編集長
・休職/離職者支援「リヴァトレ」の支援員歴10年
・精神保健福祉士/公認心理師
・双極性障害Ⅱ型の当事者
目次
双極性障害の症状をチェックリストで観察する

最後に3つ目のテーマ「双極性障害と付き合いながら働く工夫」について話していきましょう。
双極性障害と付き合いながら働く上で、何か工夫をしていることはありますか?
嫌っていうほど自分を観察していくことです。
今はどこに行っても、新型コロナウイルスに感染しているか確認するじゃないですか。
「37.5度以上の熱がありますか」ってチェックをしますよね。
「分かっているよ、熱はないよ」という状態でもチェックする。
同じように双極性障害の症状について毎日チェックをするんです。
自分のメンタル・心の状態に関しては毎日、紙でちゃんとレ点を付けていきます。



どのような項目をチェックしているんですか?
睡眠、あとは朝に目覚めるときの感覚。
「熟睡できたか」「身体の痛みはあるか」などですね。
いちばん重視しているのは睡眠と休息です。
「何をしていてもいい自分の時間はどれぐらいあったか」
「仕事のことを考えた時間はなかったか」
みたいな。
「自分の時間 = 休息」としているので。自分の時間の中で仕事のことを考えた時間が少しでもあるようだったら「調子悪いんじゃないかな」と考えます。
例えば自分の時間に「勉強していた」と書いてしまうと「これはちょっと躁のサインじゃないかな」と。

チェックリストには働く上で大事な項目をまとめる

項目の内容は人によって変わると思うのですが、ばななさんはご自分の項目はどうやって完成させたんですか?
最初はたぶん、松浦さんがYouTube動画で発信されていた項目を丸パクリしました。


私のやつ?
ごめんなさい(笑)。


睡眠とか歩数とか?
そうそうそうそう!

躁うつ症状の再発予防におすすめ スマートウォッチ活用法
私は松浦さんの項目をパクリましたけど、他にもたくさんインターネット上に情報があると思います。
そこから自分に合うものを見つけて、作っていったらいいんじゃないでしょうか。
なので私の働くための工夫としては、自分でチェックリストの項目を作ることですね。
最初は松浦さんのチェックリストの丸パクリから始まって。
後で、自分がいちばん何を大切にしたいか、働く上で何を大切にしているかを考える。
私の場合は休息と睡眠だったので、そこを大事にできるような項目にどんどんアップデートしていった感じです。


働きながらチェックを付けられる、かつ自分がうまく働くために必要な項目に収束したわけですね。
そう、それを勤務中にやるんです。
「健康管理も仕事のうちですよね」って言って。


強いですね(笑)。
だってそうしてないと(笑)。
「なんで精神を無視して、身体の調子だけを見てんだい」と思って。


選択肢が休職か退職しかない中、働く仕組みを作る

なるほど、いいと思います。トコさんいかがですか?
「勤務中にそういうことができると続けられそうでいいな」ってすごく思ったんですけど……。

チェックリストを上司に見せるわけじゃないんですよ?
ただ「自分はこういう風な症状があります。
自分のメンタルコントロールができるよう努力はしています。
それでも自分のことしか見えていないので、職務上で何か違和感があるようでしたら教えてください」
という感じで伝えられるようにする。
そうすれば周りからも「どうしたの」って配慮してもらえます。


そういう仕組み・事例を今まさに作っていらっしゃるのが心強いです。

規模が大きい事例ではないんです。
ただ、選択肢が「休職か退職か」しかないことに納得がいかなかったから、今のやり方に行き着いただけですね。
あと、私は他に武器がないのでこうなっただけです。

色々な企業の方にも(この映像を)見てほしいなって思います。

「見ろ見ろっ!」て思いますね!
あ、ごめんなさい(笑)。

双極性障害への理解を進めるために当事者による正しい情報の発信が大切
でも会社の方も本当に困っていると思うんです。
社員から「双極性障害です」って言われても、どう扱うのが正解なのか分からないですよね。
私自身も「これ言っていいのかな」「これ正しいのか」という気持ちがあるし。
お互いよく分かっていなくて困っているんですよね。

私は精神科の看護師として患者さんに対応していました。
でもやっぱり自分が双極性障害になった場合は、周囲にどうしてほしいか分かんないもん。

だから、上手に仕組みを作って、自分の状態を伝えることが大事なんですね。
ばななさんには正しい情報をどんどん発信してほしいです。
それを色々な企業の方にも知ってもらって。


トコさん、一緒に情報発信しようかね?
トコさんと一緒ならやる!

ね(笑)。
医療従事者からの「こうしたらああしたら」という情報ではなく、当事者から発信された情報が大事だと思います。
当事者の実際の状況、ばななさんがこうしてきたっていうリアルな情報は、本当に必要とされるだろうなって思います。

要は「自分はこういうふうな状態で働いていれば、業務に差し支えはないと思われます」という風に伝えて。
あくまでも主体的にやっていくっていう形ですかね。


お2人のお話を聞いて思ったことをお話ししますね。
「双極はたらくラボ」では「働きたいと望む双極性障害の人が自分らしく働ける社会の実現」を目指しています。
そうなると、当事者の方だけに情報発信するだけでは、社会は変化しないわけです。
もちろん企業へのアプローチもしていく必要があると思っているので、その際にはぜひお2人も一緒に企業に行きましょう。
そうなんですよね。
これは医療や福祉だけの問題じゃなくて、社会課題として考えることが重要なので、そのつもりで取り組んでいます。

3回にわたり「双極はたらくラボ fes’22」で行われた当事者3名の対話内容をお届けしました。
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ライター/編集者/ヨガ講師
1994年生まれ。双極性障害やうつ病の友人との交流を機に、精神疾患に関する勉強と記事執筆を開始。ヨガ講師として人の心身に向き合う活動にも取り組む。