
不眠や過眠への対処法とは|双極性障害と睡眠の関係を精神科医が解説
双極性障害と睡眠障害を専門に研究されている、精神科医の高江洲義和(たかえす・よしかず)先生。
琉球大学大学院医学研究科で準教授を務め、日本うつ病学会「下田光造賞」をはじめ数々の受賞歴がある精神科医です。
今回は「双極性障害と睡眠の関係」について、影響や症状の表れ方、対処法などを解説いただきました。
〈聞き手=松浦秀俊(まつうら・ひでとし)〉

プロフィール 高江洲先生
高江洲 義和
琉球大学大学院医学研究科 精神病態医学講座 准教授(医学博士)。
研究テーマは「双極性障害」「睡眠障害」。料理が趣味の愛犬家。
双極性障害が睡眠にもたらす影響

まず躁状態およびうつ状態に対する睡眠への影響・睡眠との関係について、教えていただけますか。

気分の変動と睡眠の変化は、ある程度関係しています。
躁状態になると、睡眠をとらなくても割と活動できてしまうといわれています。
過活動になった結果、睡眠欲求が低下することが多いのは、双極性障害の方に共通する点かもしれません。
より説明が難しいのは「うつ状態と睡眠の関係」です。

そうなんですか。

最も一般的な症状は「頭のなかでネガティブな考えが浮かんだり、不安になったりして、夜眠れなくなってしまう」こと。
いわゆる不眠症状が表れる点は、他の精神疾患も同じですが、不眠症状に加えて双極性障害のうつ状態で表れやすいのが「過眠」です。


実は、過眠の正体は分かっていません。
「ストレスで眠れなくなる」ことはよくありますが、過眠になる原因は判明していないため、私も一言では説明できないのが現状です。
このように、うつ状態の場合は不眠や過眠など色々な睡眠の問題が表れる点が特徴でしょう。

双極性障害の診断を受けた場合、大半の方は、睡眠に影響が出るものですか。

睡眠に何の影響も出ない人は、ほとんどいないと思います。
ただ、睡眠欲求の減少・不眠・過眠のすべてを経験するのではなく、どれか1つだけ経験したことがある人が大半だと思います。

私はかなり睡眠に影響が出るのですが、まれに「私は全く影響が出ないです」という当事者の方にお会いします。
「そんな方もいらっしゃるんだ」と驚きました。

統計的には8~9割ぐらいの人は影響が出ると言われています。
1~2割の人は「気分の面で困ったことがあっても、睡眠で困ったことはない」のでしょう。

睡眠は、診断基準に含まれる色々な項目の1つ。
「睡眠に影響が出なくても、それ以外で症状が表れている」のかもしれません。
双極性障害では自分のリズム周期で最適な睡眠時間を見つける

そもそも「良い睡眠」とは、どのようなものですか。

よく「8時間睡眠が良い」「たくさん寝るのが良い」と言われますが、必ずしも正しくありません。
理想的なのは「適度な長さの睡眠」と言われています。
「『適度な長さ』は何時間ですか」と質問された場合、答えは「人それぞれです」。

人によって異なるのですね。
ただ、適した睡眠時間は、なかなか自分では把握するのが難しそうです。

自分にとっての適度な長さを測る上では、リズム周期が大事。
例えば毎日23時に寝て6時に起き、問題なく1週間を過ごせていれば、それがその人にとって最適な睡眠の長さとリズムです。
これが「平日は仕事が忙しくて5時間しか寝られない。土日はまとめて12時間寝る」となった場合、リズムが乱れていますね。
質の良い睡眠ではないし、適切な睡眠時間も分からなくなってしまいます。

なるほど。
適切な睡眠時間を把握するには、どうすればいいのでしょうか。

まず毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きるリズムを作ること。
リズムに従ってしっかり眠れているのであれば、それがその人にとってベストな睡眠時間です。


「そんなに規則的に寝られないよ」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
そこが双極性障害の睡眠問題における、最も中核的な部分と言われています。
気分が上がったり下がったり、波を描くように睡眠も上がったり下がったり、リズムのように移動するのが双極性障害の特徴です。

確かにそうですね。

リズムを取りにくいからこそ、リズムを取ること自体が治療になります。
「対人関係社会リズム療法」※という治療で睡眠のリズムを取ることが大切と言われています。
※:対人関係のストレスを減らすとともに、規則正しい社会リズムを確立して、社会的役割に適応できる状態を目指す療法
参考:水島広子「双極性障害の疾患教育と対人関係・社会リズム療法」『精神経誌 113巻9号 特集 双極性障害の治療を考える:エビデンスレビュー』日本精神神経学会,2011

ただ大事な治療ですが、双極性障害の方にとっては簡単ではありません。

効果的だけど、ハードルも高いのですね。
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ライター/編集者/ヨガ講師
1994年生まれ。双極性障害やうつ病の友人との交流を機に、精神疾患に関する勉強と記事執筆を開始。ヨガ講師として人の心身に向き合う活動にも取り組む。