双極性障害Ⅱ型の当事者で、保育園とクリニックで看護師として働いているふゆさんにインタビュー。
今回は「双極性障害の発症と仕事の変遷」「ダブルワークの経緯」について話を聞きしました。
〈聞き手=松浦秀俊(双極はたらくラボ編集長)〉
※インタビューは2022年8月に実施しました。
プロフィール ふゆさん
・双極性障害Ⅱ型
・保育園とクリニックで看護師として勤務
目次
現在の仕事内容を教えてください。
保育園とクリニックで週に数日ずつ掛け持ちをしながら、週4.5日働いています。
クリニックが週1.5日、保育園が週3日勤務です。
掛け持ちされてるんですね。
それぞれ、具体的にどんなことをされてるんですか。
保育園の方は、100人強いる子どもたちの健康管理や、内科検診・歯科検診などのイベント手配、保育士さんへの相談対応など多岐にわたります。
クリニックでは消化器内科で働いていて、一般的な看護師業務をしています。
収入的には、問題なく生活できますか。
結婚していることもあって、金銭的に困ることはほとんどないです。
ただ、1人暮らしの場合で考えると、もうちょっと頑張ったほうがいいかなと思います。
職場では、双極性障害について開示していますか。
クリニックは完全クローズで、保育園は自分ではクローズと思ってます。
「自分では」ということは、周りは気づいているかもしれない?
園内のごみ箱に、毎朝飲んでいる治療薬の炭酸リチウムを捨てた時に、「これは躁うつの薬ですよね。あなたのですか?」と聞かれたことがありました。
はっきり答えませんでしたが、その時から双極性障害と思われてるのかなと。
双極性障害の発症はいつ頃でしょうか。
おそらく、19歳・大学2年生の時だと思います。
大学に入って一人暮らしを始めたんですけど、夜中に近所の公園で遊具に乗って遊びほうけて職務質問をされていた時期がありました。
その後、ガクンとうつ状態になって救急搬送されたんです。救急隊の方から大学や実家に連絡が行き、大学から紹介された精神科を受診しました。
そこで出された薬がバルプロ酸ナトリウムという気分安定薬(双極性障害の薬)で。
言われてはいなかったんですけど、その時の主治医が双極性障害を疑っていたのかもしれません。
正式に双極性障害と診断がついたのは、どのタイミングなんですか。
2021年の12月です。
何かきっかけがあったんですか。
慕っていた祖父が亡くなったことや、夫との関係など色んなことが重なり大うつになって。その時にたまたま出してもらった炭酸リチウムを飲んだら、症状がわりと良くなったんです。
あと、抗うつ剤を飲んだ時に「人生バラ色・何でもできる!」という状態になったことを主治医に伝えたら、「いわゆる躁状態ですね」と言われました。
それで正式に双極性障害と診断がつきました。発症と思われる大学生の時から、診断を受けるまでは12年かかりましたね。
双極性障害と知らずに働かれていた時期が長かったんですね。
大学卒業後は新卒で働かれるんですか。
そうです。新卒で看護師として働き始めました。
働いてみてどうでしたか。
就職先は「そこに入ればエリート確定」と言われるような大病院だったんです。
自分もエリート街道に乗れるだろうと思って働いていたんですけど、毎日退職届を突きつけられるような環境で。
そのうち、かなりのうつ状態になってしまい、3か月の休職を経てそのまま退職しました。
休職に至るまでは半年ぐらいだったので、1年も働いていないです。
それは大変な経験をされたんですね…。
退職された後はどうしたんですか。
違う病院に転職しました。
看護師として育ててもらったいい思い出がありますが、配属先が手術室だったんです。手術室ってやっぱり大変なんですよ。残業も多いし。
大変な中でも頑張ってはいたんですけど、自分のことを傷付けたりと代償はありました。
結構無理して働いていた?
何とか自分を奮い立たせていましたが、無理してたんだと思います。
その職場ではどのくらい働かれたんですか。
2年くらいですかね。
休職とかではなく、自傷行為をしていたことが職場に知られてしまい、居づらくなったので辞めました。
そうだったんですね。
それ以降も、職場を変えられるんですか。
かなり変わってますね。地域包括支援センターで働いたり、放課後デイサービスで働いていたこともありました。
自傷行為をしていたことが見つかって職場を変えたというお話がありましたが、転職後もそういった行為は続いていたんですか。
そうですね。リストカットやオーバードーズなど一通りやりました。
今はだいぶ落ち着いています。
しんどくなったら「ちょびっと、やけ酒するか」くらいで、普通の人と同じような感覚ですね。
どうして落ち着つくようになったんですかね。
ダブルワークになったことが大きいと思います。
働き方について考えた時に、過去に人間関係で辞めたことがあったので、同じ人間と週に5日も顔を合わせるのは無理だと思いました。
「じゃあ週2日だったらどうか?」と考えた時に、そのくらいの頻度だったら何とかなりそうと思えたので、職場を分けてみることにしました。
この2・3年ぐらいは2つの職場を掛け持ちして働いてます。
1つの職場で働いていたときと、職場を分けたときで何か変化はありましたか。
日々新鮮な気持ちでやれていますね。
同じような内容の仕事を週5回することが、自分にとってはつまらない。毎日同じ人間と顔を合わせるっていうのも好きじゃない。
クリニックと保育園とでは業務内容も人間関係も違うので、ある意味気分転換できるというか。
新鮮で飽きないというのはメリットですね。
一方で、2つの環境に慣れないといけない負荷だったり、刺激が多過ぎたり大変な面もあるのではないかと思うのですが、いかがですか。
確かに2つの業務を覚えなきゃいけないことは、正直大変です。
勤務時間の関係で社会保険に入れないなどの福利厚生が受けられないデメリットもあります。休職をした場合に傷病手当金がもらえないとか。
それでも、メリットとデメリットを天秤にかけたら、ふゆさんにとっては職場を分けるほうがよかったんですね。
今の考えでは、週2・週3と分けて長く働ける方が、同じ職場で週5日働いて1年たたずに辞めるよりもメリットが大きいんです。
今まで色々な職場で経験してかなりの紆余曲折がありましたが、やっと今の自分に合った働き方が見えてきたかなと思います。
双極性障害の症状によって、今の仕事に支障が出ていることはありますか。
薬で気分の波が落ち着いても、「今日無理だわ…」っていう日もあるんです。
そういうときは仕事を休んじゃうんですけど、休むには理由が必要じゃないですか。
でもクローズで働いているので「双極性障害の症状で…」とは言えず、結果的に「熱が出た」とか、嘘をついて休むんです。
そういうしんどさはあります。
あとは、ちょっとうつっぽい場合でも、いつもと同じように振舞わなければいけなくて。
保育園という職場なので、それどころじゃないときでも、子どもにはニコニコしてなきゃいけないとか、そういった辛さはありますね。
気持ち的にしんどさがあるということですね。
働く上で、何か工夫していることはありますか。
まずは早く寝ること。睡眠時間を確保することが絶対条件です。
昔は、夜ダラダラして気分が乗ったら寝ていたんです。3・4時間寝られればいいやという感じで。
今は、この時間までには寝ると決めて寝てます。
あと薬ですね。基本飲み忘れることはないんですけど、しっかりと飲むようにしています。
症状の上がり下がりによって、服薬が変わったりとかはあるんですか。
今のところは一定していて、決まった薬を毎日飲んでいます。
今はある程度安定しているんですね。
他にもありますか?
休むということを知らない人間だったので、なるべく休める時に休んだり、何日も予定のない日を作ったりしています。
気分が上がったときに予定を入れがちになるので、休むことを頑張る。
最後に、ふゆさんが読者に伝えたいことはありますか。
私は、双極性障害を発症したと思われる時から診断を受けるまで、12年かかってるんです。
12年の間にいろいろなことがあって、お金・人・仕事など、たくさんのものを失ってきたんですよ。婚約破棄もありましたし。
だからこそ、自分のような人生を歩まないでほしいなと思うんです。
こういう記事やいろんな情報の中から自分の状態に気づき、早く正しい診断に繋がってほしいです。
何か告知があれば、ぜひお願いします。
双極性障害と診断を受けた時から、「カクヨム」という小説サイトで「双極性障害のわたし、日々是私日記。」という日記をつけています。
その日の状態や感じたことを徒然と綴っておりまして。
読み返すと「今日ハイじゃない?」「この日はちょっとうつなんだな」みたいに、ぱっと見で状態がわかるんですね。
なので、日記を読んでいただければ、双極性障害を少し分かっていただけるかなって思っています。
▶ふゆさんの日記「双極性障害のわたし、日々是日記。」はコチラ
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双極はたらくラボWebメディア責任者
1999年東京都生まれ。2022年に新卒社員としてリヴァへ入社。