
うつ・躁状態とどう向き合う?夫から見た双極性障害Ⅱ型の妻
双極性障害と向き合うことは、当事者だけでなく、その家族やパートナーにも大切です。
前回の記事では双極性障害Ⅱ型の当事者である板倉さんにお話を伺いましたが、今回は“もう一つの視点”として、夫である杉森さんにインタビュー。
「夫から見た双極性障害Ⅱ型の妻」「パートナーとしてどう向き合っているのか」をお聞きしました。
〈聞き手=松浦秀俊(双極はたらくラボ編集長)〉
板倉さんのインタビュー記事はこちら

プロフィール 杉森さん
・板倉さんの夫
・舞台役者
・板倉さんが書いた双極性障害を扱った作品で、当事者の役をやった経験あり。

プロフィール 板倉さん
・双極性障害Ⅱ型
・舞台役者。劇作家。演出家。
・演劇ユニット「Lumeto」代表
・双極性障害をテーマにした「息のできる場所」という舞台を主催
目次
交際ゼロ日 出会いから結婚に至るまで

お二人は、どんな出会いでしょうか。

僕が出演する舞台の稽古中に、彼女が見学をしに来たんです。
その時は名前を耳にしたぐらいでしたが、一目見て「何かある人なんだろうな」と思ったことが記憶に残っています。

この人、そういうのに感づく人なんですよ(笑)。


出会いからお付き合いされるまで間があると思いますが、印象は変わらないままでしたか。

1年に1回会うか会わないかぐらいだったので、特に印象というのは変わることはなかったです。

そんななか、急にお付き合いするんですか。

彼女が運営する劇団で舞台に出演した後に、何を思ったのか彼女が僕のことを好きになってしまって(笑)。
それから月1ぐらいで、僕が興味ありそうなことプラス、飲みに誘ってくれるようになりました。
毎回、次の誘いを断ろうと思っていたんですが、酔っぱらって断るのを忘れてまた会う、ということが続いていました。

そこからどうして結婚に?

僕が住んでいた家の隣で基礎工事が始まったことがきっかけです。
昼間から工事をやっていて、振動がすごくて。当時は夜勤をやっていたので、お昼頃に寝ていたのですが、このままでは眠れないと。
そこで、何人かに声をかけて寝かせてもらえる家を探してた時に、彼女が 「うちに来ればいいじゃない」と言ってくれました。


最初は断ろうと思っていたんです。
でも、私は年齢が上がって妻子持ちの役が来るようになっていた時期だったので、夫婦生活を経験してもいいかなっていう思考が出てきたんでしょうね。
そこから家に上がり込んで、一緒に住み始めました。
ある日、玄関出て仕事に行こうとした時に、何を思ったか「いっそのこと籍入れちゃう?」みたいなことを言っちゃって。

そうなんです。ゼロ日婚なんです(笑)。
色々噛み合わないまま、噛み合っちゃって、今に至っています。
双極性障害の妻 結婚してから印象は変わった?

私は、妻に「付き合った時と、一緒に住んでからのイメージが全然変わった」と言われたことがあります。
杉森さんは付き合う前、同棲した期間、結婚した期間で、板倉さんの印象が変わりましたか?

付き合う前は、ある程度安定していました。
彼女は人と会う時に、エンジンをかけて自分を作った状態だから、内情までは計り知れなかったんです。
実際一緒に住むようになると、落ちているところや、上がっているところも見せてくれるようになりました。


そういう意味では、彼女の僕に対する扱いがちょっと変わったかなと思います。

特に印象的だったことはありますか。

機嫌がいい時はかわいいですが、ちょっとしたことで気分が変わります。
その切り替わる時が印象的です。

気分が落ちた時は、どんな状態になりますか?

甘えるようになったり、幼児化したりしますね。
例えば、僕が「こうしたほうがいいんじゃないの?」という提案をすると、「いいの!!私は◎△$♪×¥○&%#だから!!」と、言葉にならないようにぐずるというか。

逆に上がってくると、どうなるんですか。

ご機嫌になるか、攻撃的になります。
多分、彼女には理想があって、そこから外れた状態の時はアグレッシブになっちゃうんですよね。
僕に対して、妄想状態が少し強く出ちゃう印象があって。
「私は全然ダメだし、言われたことに対して責められていると思うんだ」というように。

杉森さんの言うことを、全部否定的に捉えちゃう感じですかね。

ですね。
加えて、攻撃されてるように感じちゃうのかな。ダメージを受けている印象があります。

彼が攻撃をしているつもりがないのは分かっているんです。
でもそう感じてしまうから、自分も仕返しをしてしまって。
どんどんエスカレートして、最終的に爆発してしまいます。


なるほど。それがサイクルとしてあるんですか?

ありますね。
ただ、彼女がうつになった時に、手っ取り早く元気になってもらう方法が、爆発させちゃうことだったりするんですよね。

だから、わざと爆発させようと攻撃を仕掛けてくる時もあるんですよ。

最初の頃は、彼女の症状との付き合い方がよく分からなかったんです。
でも爆発させるとその後は結構元気になることが分かったので、わざと仕掛けてみたり。
結局お互い怪我してしまうので、最近は回復させるための手段として使わないようにしていますが。
双極性障害の症状に対して夫婦間で決めていること

お互いに取り決めている対処の仕方はありますか。

落ちている時は、「お風呂にも入らなくていいからベッドで寝るようにしよう」と言っています。

私からは、「必要以上にお風呂って言わないで」と伝えていますね。

上がっている時はどうですか?

最近は、「頑張りすぎないように」と伝えるようにしています。
100%動けるからといって最大出力で動くと、すぐにエネルギーを消耗しますよね。


だから大体7・8割ぐらいのパワーで動けるようにペースコントロールできるといいんじゃないかと。
彼女の中で、調整方法を見つけてほしいなと思います。

板倉さんは、ペースコントロールについて、ご自身でも意識されているんですか。

100%で動いていることに、気づく時と気づけない時がどうしてもあって。
気づいたら休むようにしますが、気づく前にいきなり落ちる時もあります。
どうしたら分かるんですかね。

おそらく、上がっているときは長期的なスパンじゃなくて、短期的に物事を見ているんだと思うんですよ。
先のことは考えずに、今動けるから動いちゃえ、と。

それは言動で分かるんですか。

言動もですし、上がっている時、僕には長期的に動くための体調とかパワーのコントロールを考えずに、目の前のことに取り組んでいるように見えるんです。
だから短期的なスパンで物事を見ている時は、上がっているんじゃないかな。
ダメな自分も受け入れられたら素敵だと思うんです

最後に、読者・当事者のパートナーの方にメッセージがあればお願いします。

彼女に対しても言えることですが、「自分はこうありたい」という理想に対して、ちょっとズレると落ちてしまう印象があります。
でもズレたから否定するのではなく、ダメな自分も受け入れたら素敵なんじゃないかと思うんですよ。
受容できたら素敵だし、できなくても頑張ったからそれはそれでよくて。
最近は、彼女だけでなく、二人で受け入れられる余裕があったらいいと感じています。

このインタビューで、夫がどう思っているのか初めて知ったこともあったので、ありがたかったです。

ちなみにどの点ですか。

スパンの話と、理想が高いから受け入れられるようになったらいいという僕の願いは、話したことがないので、そのあたりかなと思います。

うん、そうです。
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双極はたらくラボWebメディア責任者
1999年東京都生まれ。2022年に新卒社員としてリヴァへ入社。