新卒・正社員で働くべき?双極性障害のある大学生へアドバイス

公開日: 2023.5.15
最終更新日: 2024.7.1

2023年3月9日(木)にNPO法人Collableが運営する障害学生ライフキャリア支援プロジェクト「GATHERING」のオンラインセミナーに双極はたらくラボ編集長の松浦が登壇しました。

セミナーでは双極性障害など精神疾患のある学生に対し、前半は「双極性障害と働き方・キャリア」を軸に松浦の経験や工夫をお伝えし、後半は質疑応答を行いました。

本記事では、後半に行った質疑応答の一部をご紹介します。

※当記事では、個人を特定できないよう留意しています
※当日聞いた情報に基づく回答であり、絶対的な正解とは限りませんので、あくまでも参考程度にお考えください

プロフィール 松浦

双極はたらくラボ編集長/精神保健福祉士/公認心理師

1982年島根県生まれ。21歳の時に双極性障害を発症。20代で転職3回休職4回を経て、リヴァの社会復帰サービスを利用。のち、2012年に同社入社(現職での休職0回)。 一児の父。

チャレンジできる企業か パンクしない程度に働ける企業か

学生A
学生A

今就活をしています。

やりたいことにチャレンジできる企業を選びたい気持ちがある一方で、現実的に自分がパンクしない程度の裁量で働ける契約社員・障害者雇用枠で働くか悩んでいます。

自分の中でちょっと無理をすると症状が出るタイプなのですが、チャレンジする企業だと自分のコントロールできない範囲まで背伸びをしちゃうという不安があって。

どう選択するのがいいかアドバイスはありますか?

松浦
松浦

クローズで働く想定ですか?

※クローズ:ここでは、企業に対して自分の障害を開示せずに働くことを指す。⇔オープン

学生A
学生A

企業によってはオープンもあるかなとは考えています。

例えば障害者手帳を持っている方でも、差別なく能力で評価してくれる会社とか。

ただ能力が発揮できなくなった場合のリスクを自分の中で本当に背負ってできるのか今の時点で計算できないっていうのが不安ですね。

松浦
松浦

病気のあるなしに関わらず、人は何かしら不安は抱えるものだとすると、どんな選択をするかはご自身の目指したい状態によるかなと。

ただ新卒でもオープンで働ける枠があるっていうことであれば、チャレンジするのはありなんじゃないかと思います。

私は今の会社で初めてオープンで働いてるんですけど、うつっぽくなったときに別の理由を言わなくていいことが、とても楽なんですね。ずっと障害を隠してるっていう気持ちがありながら働くって、気づかないうちにストレスになっていくので。

松浦
松浦

働く前だと余計イメージしずらいと思いますが、会社に入ると、思ってる以上にみんなが「どうしようか」って一緒に考えてくれることもあります。

働く前の不安をゼロにしようと思っても難しいとので、主治医や周りの人に相談しながら、不安と付き合いつつどう働くかを見つけるのが大事なのかなって思いましたね。

精神保健福祉士の取り方とキャリアへの活かし方

学生B
学生B

精神保健福祉士(以下、PSW)の資格を取りたいと考えていますが、取得した方法と目的を知りたいです。

松浦
松浦

私は社会人向けの通信講座を1年半かけて卒業して、その後PSWを取りました。

2012年に人生で初めて福祉職・支援職に就いたんです。最初の1年は資格がなくても問題なかったんですけど、だんだん当事者体験だけで支援をする限界を感じて。

自分の体験を話せるのは良い点でしたが、自分の体験を話しすぎた結果、利用者と依存的な関係になっちゃったんですよね。ちょっとまずいなって思ったときに、今までの体験を裏付ける知識が必要だと感じて、勉強しようと思いました。

「実践ができるからいいよ」と言われたので、最初は産業カウンセラーを取ったんです。カウンセリング・傾聴の勉強を、確かロープレで100時間ぐらいやるんですよ。

松浦
松浦

PSWは、サービス管理責任者(以下、サビ管)の要件を満たすから取ろうと思いました。

障害福祉サービスをおこなっている事業所は、サビ管っていう責任者を1人配置しないといけないんですけど、当時のサビ管になれる要件の一つが「相談支援業務を5年以上かつPSW等の国家資格を持ってること」で。

当時4年目だった私は「来年5年目になるから、PSWとればサビ管要件を満たすな」と考えたんです。

学生B
学生B

PSWをとったあと、どのようにキャリアに活かしていますか?

松浦
松浦

サービス管理責任者になったことですかね。サビ管になれる人はそんなに多くはないんで。

サビ管配置にあてがってもらえるという意味では、会社的にはプラスになったでしょうし、自分としてもPSWの学びが仕事に直接活かせたかなと思います。

働くときに自分の「ここまでならできる」範囲を見極めるには?

学生C
学生C

自分の体調・体質的にいきなりフルタイムで働くことが難しいのではないかと思っています。だから働くときに、自分の「ここまでならできるな」とか「ここはちょっと危ないな」みたいな感覚を優先していった方がいいのかなって。

でも世間的には新卒で正社員になるのが一般的だし、「自分ができないって思っているだけかもしれない」と言われたこともあるので、初めから正社員になるか迷っていて。

「ここからここまでならできる」をどうやって見極めていったらいいのか、アドバイスがあればお聞きしたいです。

松浦
松浦

正直今振り返れば、私が21歳の時に双極性障害と診断されていたら、名古屋から東京に出ていないだろうと思います。

知らなかったがゆえに、やってこれたこともあれば、気分が落ちたときには身の危険を感じるぐらい大変なこともあって。今振り返れば「良かった」ってまとまるんですけど。


ただ、社会人として働いたことない中で「ここまでできる」っていう基準を持つのは正直すごい難しいと思います。

ちなみに、新卒で入りたい会社・やりたいことはありますか?

学生C
学生C

「新卒で」は、特にないです。

松浦
松浦

ないのであれば、新卒じゃなくてもいいと思いますよ。

大手企業とか、名の知れた会社・業界を希望するのであれば、中途だと経験者じゃないと入りにくいところが多いから「入り口としては新卒だよね」っていう認識があるのかなと。

新卒カードを使う必要がないと思われるんだったら、自分の人生なので周りの「新卒がいいよ」という意見に従う必要はないと思います。

どちらかというとご自身が納得することが大事ですし、新卒にこだわりがないのであれば「最初から正社員」にもこだわらなくていいと思います。

まず働くことに慣れることが大事だと思うので、自分でステップを設定する。

松浦
松浦

フルタイムの手前で止まれば「自分の働ける範囲がここまでなんだな」ということが分かりますし、フルタイムで働けそうであれば、それはそれでOKで。

一番危険なのは、自分の範囲が分からないなかでフルタイムでがむしゃらに働いて、大きく調子を崩したときだと思います。

本当に大変な状態になる可能性があるので、そのリスクを考えたら自分の「ここまでできそう」というステップから徐々に負荷をかけた方が安全ですし、現実的かなと思います。

参加学生からの感想

セミナーに参加いただいた学生の感想を一部抜粋してご紹介します。

学生A
学生A

いろいろな人の意見を聞いて知見を広めたいと思い参加しました。

会社に入る前にすべての不安を解決しようとしなくていいということが実感できました。

学生B
学生B

当事者の例があまりにも少なすぎるので困っていました。

働きたいように働ければいいのだということ感じました。また、障がいのある学生だからみんなと同じように就労について考えなくてもいいのだということを痛感しました。

今後の生活に今回のセミナーの内容を生かして人生の中での選択に繋げていきたいです。

学生C
学生C

自分のペースで就労について考えていこうと思えました。

精神保健福祉士の資格の取得方法や活かし方についてもっと知りたいと思いました。

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