
双極性障害と自分に向き合う中で見つけた症状を安定させる方法
双極性障害Ⅱ型の当事者で就労継続支援A型事業所※(以下、A型事業所)で働いている松岡さんへのインタビュー。
今回は、松岡さんの双極性障害の発症と仕事の変遷、北海道に移住してA型事業所で働くまでの経緯について話していただきました。
※一般的な企業で働くことが難しい障害のある方が、雇用契約を結んだ上で働くことができる障害福祉サービス
〈聞き手=松浦秀俊(双極はたらくラボ編集長)〉

プロフィール 松岡
・双極性障害Ⅱ型
・北海道に移住し、A型事業所に勤務
目次
気持ちの糸がプチッと切れて、双極性障害と診断される

大学を出てから今までの職歴を教えてください。

3つぐらい転々としましたが、新卒から合計で10年ぐらい介護職として働きました。
体育教師やアルバイトも経験し、今はA型事業所で働いています。

転職もご経験されているんですね。

そうです。でも、喧嘩して退職とかではなくて、引越しや環境によってです。
20代中盤で介護の現場で主任になったり、責任がどんどん増えていくうちに、「あ、これちょっと寝られへん」という状態になって。


ただ、その時は双極性障害という診断も出ていなかったし、胃腸薬とか睡眠薬で何とかだましだましやっていたんです。
病院の先生には「介護職が向いてないんじゃないか」って言われました。

どうして「向いてない」と言われたんですか?

「介護職がストレスになるだろう」という診断だったので。
それで介護職を辞めて、体育大学時代に教員免許を取得していたこともあり、体育教師になりました。
大きく職種を変えれば良かったのですが、「人と接する」という点で似たような職に就いちゃったんですよね。


体育教師はどのくらい続けたんですか?

1年半くらいですね。
夏祭りの準備中に教員でテントを張っていたんですけど、自分の言ったことを誰も聞いてくれなくて、自分一人で作業するシーンがあったんです。
その時に「あれ、何で一人でやってんだろう」と思って急に気持ちの糸がプチッって切れたんですよね。もう何にもやる気がなくなっちゃって。

糸が切れた後のことは覚えていますか。

瞬間は覚えているけれど、その後はあまり覚えていないんです。
多分次の日から出勤できなくなったんじゃないですかね。
その時に初めて「双極性障害じゃないか」と病院で診断されて、「なんじゃそりゃ」って。28か29歳の時でした。
双極性障害を受け入れられず、半年働いて半年休むの繰り返し

双極性障害と診断された後、体育教師を続けたんですか。

学校に全く行けなくなったので、辞めました。辞めてから恐らく半年ぐらいは動けなかったと思います。
その後、もともと勤めていた介護の方に戻りました。

戻ってからはどうでしたか。

自分の中で治るとも思っていたので、なかなか双極性障害を受け入れることができなかったです。
でも途中から、自分が半年に一回しか働けないっていうのが大体分かってきたので、色んなアルバイトにチャレンジしました。


一つの仕事を続けるのではなく、半年働いて、半年休んで、別のところで半年働いて…ってことですね。

そうですね。
「次は牧場で働こう」とか「温泉で働こう」とか。飲食・販売など本当にいろいろやりました。
記録をつけると分かってきた「今はできない時」

半年冬眠して半年働いて…という働き方は、どのくらい続けたんですか。

28~35歳ぐらいまで繰り返していました。
本当に長いトンネルで。


最終的には「双極性障害がもう治っただろう」と思えるぐらい元気になって、友達のところで子ども達にマット運動とか鉄棒を教えていんですけど、落ちてしまったんですよね。
友達のところなので気を張らずに働けて、ストレスを感じてないにもかかわらず。
そこで初めて「もっと自分に向き合おう」と思って、日記を書くようになりました。


あと、もっと自分を知るために、どういう時に調子が悪いのか・調子がいいかをデータで記録することもやりました。

誰かに指導されたとかではなくて、自分で思いついて始めたんですか?

認知行動療法というのをちらっと耳にしたときに、認知行動療法について調べたんです。
でも、自分に認知行動療法を取り入れるのは難しいだろうと判断して、自分にできることは何だろうっていう風に置き換えました。
携帯で1日の日記と称した写真を撮るとか、まずは継続するためにハードル低く始めて慣れさせていって、どんどん変化させていきました。


記録をつけることで、何か変化はありましたか。

調子の波が分かるようになりました。
できない自分にイライラするんじゃなく「今はできない時なんだ」って思えるようになるので、気が楽になりました。

過去の記録パターンからそういう時期なんだっていうのが納得できるようになったんですね。
症状を安定させるためにやったこと

うつ状態に落ちてしまった後も、マット運動を教える仕事を続けていたんですか?

いや、その時は一回ズドンと落ちちゃって復帰はできませんでした。
なので自分を見つめる時間に使っていました。
何でこの波が来るのかと考えた時に、親からくるストレスで落ちることが多いということに気付いたので、親と距離を取ることにしました。

それまではご実家だったんですか?

いえ、25歳ぐらいの時に結婚していて、離婚も経験しているので、その時に買った家で生活していました。
最初は自分一人で住んでいて、調子もよくて。
でもそこの家に両親が来ることになったことをきっかけに、大崩れしました。

崩れたから、距離を取ろうと。

そうですね。
自分は兵庫に住んでいたんですが、離婚した後に出会った今の妻が北海道に住んでいたこともあって、思い切って北海道に行こうと決めました。
ちょっと話が前後しますが、マット運動を教える仕事を辞めた後にさくら先生※と出会いました。
そこで、さくら先生に薬を減らしてくれってお願いしたんです。
※精神科医。さくらこころのクリニック院長。自身も双極性障害の当事者で、過去には双極はたらくラボでもインタビューさせていただきました。さくら先生の記事はこちら

薬が多い状態だったんですか。

むちゃくちゃ多かったです。
なので「双極性障害か1から調べてほしい」「これだけ飲んでたら薬が合ってるのか分からないから、ゼロからでいいからさくら先生が思う薬を出してほしい」とお願いしました。


やってみてどうでした?

減らす方向に持っていってもらって、かなり少なくなったんですね。
そうしたら、どの薬がどう作用しているのかが分かりやすくなったので、「この薬飲んだら、こういう症状が出るからやめたい」と言いやすくなりました。

診断的にも、やっぱり双極だったってことですか?

双極で診断してもらって、そのまま双極としての薬を集中して飲むようになりました。

さくら先生とのやり取りで薬が絞られてより安定した状態になっていったんですね。
高いハードルを乗り越えて、北海道に移住

北海道には、どのように移住されたんでしょうか。

症状が安定した状態になったので、さくら先生に「北海道に行きたい」と伝えました。
ただ、衝動で「北海道行きたい」って言っていると思われないように、1年ぐらいかけて「彼女が北海道にいるし、今の親との生活は苦しいから北海道に行きたい」と言っていました。


結果「いいですよ」と言ってもらえたんですが、実際に移住するまでに時間がかかったんですよね。
仕事もなく、年金もらっていて、持ち家があって、バツイチという条件で北海道に移住するっていうことは、むちゃくちゃハードルが高くて。

何に対してのハードルが高かったんですか?

まず大家さんに受け入れてもらえないので、賃貸の家が見つからない。
あと今の妻の親にも反対されていたっていうのもありますし、色々なハードルがあって、なかなか行けなかったんです。

ハードルが高い中で、何がきっかけで移住できたんでしょうか。

北海道の不動産屋さんに電話した時に、「こういう支援をしてくれるところがありますよ」と紹介してくれたのが、今の相談支援員さんでした。
その方と自分の相性が良くて、色んな人に手伝ってもらいながら北海道移住が決まりました。


サポートがあって初めて「移る」という具体的な話になってたんですね。
移ってきてからすぐにA型事業所で働くことになるんですか。

そうですね。
結構早い段階で、相談支援員さんにA型事業所で働いてみたい気持ちを伝えて、紹介してもらいました。

松岡さんから言ったんですか。

そうです。
兵庫県にいる時は、病院の人に「松岡さんには向かない」と言われて事業所を紹介してもらえなかったんですね。
自分で言うのも変ですが「障害を持っている方にしては、作業のレベルが高過ぎるから、事業所行っても浮くと思うよ」と言われていて。
でも環境が変わったこともあり、とにかく仕事をして安定したい思っていたので、「事業所で働かせてほしい」とお願いしました。
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双極はたらくラボWebメディア責任者
1999年東京都生まれ。2022年に新卒社員としてリヴァへ入社。