アルバイトが続かない…双極症の学生4名が語る「働く工夫と困りごと」【U25座談会】

公開日: 2024.6.26
最終更新日: 2024.8.9

社会との接点が、ぐっと増える10代後半から20代。

進学や就職など、様々な選択肢が目の前に広がって、「自分はどんな道を歩もうか」と希望と不安が入り混じる。

そんな時期に双極症(双極性障害)と診断されたら…?

双極はたらくラボでは、2024年3月15日に双極症の学生を対象としたオンライン座談会を開催。

「学生×働く」というテーマについて、双極症と向き合いながらアルバイトやインターン・就職活動を経験中の学生たちが、それぞれの思いを語りました。

今回は、座談会で語られた「アルバイトやインターンをするうえでの困りごとや工夫」について、ご紹介します。

※本記事の情報は2024年3月15日時点のものです

参加者プロフィール

きりゅー
双極症Ⅰ型。大学3年生・24歳。2020年に双極症の診断を受ける。現在就活中。
過去行ったアルバイト:塾講師・ホテルスタッフなど

なべし
双極症Ⅱ型。大学3年生・23歳。2020年に双極症の診断を受ける。現在就活中。
過去行ったアルバイト:塾講師

ふうか
双極症Ⅱ型。美容学生・24歳。2022年に双極症の診断を受ける。美容学校を3月末に退学。
過去行ったアルバイト:アパレルなど

りゅう
双極症Ⅱ型。大学2年生・23歳。中学1年生の時に双極症の診断を受ける。大学を3月末に退学。
過去行ったアルバイト:工場での派遣・スポーツバー・塾講師・ラーメン屋など

うつ状態で欠勤が続き、アルバイトを続けるのが難しい

――座談会に参加いただきありがとうございます!まずは、みなさんがアルバイトや企業でのインターンシップを経験された中での悩みや困りごと、どんな工夫をしていたか、それぞれ話を聞かせてください。

きりゅー(大3):大学1〜2年の頃はまだ診断を受けておらず、塾講師としてアルバイトをしていました。症状もなく順調だったんですが、3年生になった2020年から、だんだん通うことが難しくなってきたんです。正直に社員さんに相談して「突発的に休むことがあるかもしれません」と伝えたところ、結構理解していただけて。ちょうどコロナ禍に入ったタイミングでもあったので、なかなか出勤していない時期も多かったですが、復帰したいと思った時には、快く受け入れてくれました。

躁状態の時は、働くことに対してはあまり問題はないんですよ。注意散漫になってミスをすることはあったと思いますが、そこまで大きな困りごとはなかったです。でも、うつ状態だと体調が優れなくなってくるので、どうしてもアルバイトに行きにくい。元々そういう状態になる可能性を伝えていたので、「すみません、今日は気分が沈んでいて出勤できそうにないです」みたいな感じで言っていました。

ふうか(美容学生):ここ1年間はバイトをしていないんですが、1年前に1か月だけアパレルの仕事をやっていました。

双極症の診断を受けたのが2022年の3月なので、その後に初めてやったバイトなんです。面接では何も言っていないので、クローズで働き始めたんですが、バイト当日になって不安感が強まってしまい…。うつっぽい状態になって休みが続き、結局すぐに辞めることになってしまったんです。

振り返ると、何も伝えなかったのが良くなかったなと。今後働く場合は、障害をオープンにして働くほうが合っているのかなと思っています。

※クローズ:病気を開示しないこと

なべし(大3):僕は高校3年生の時に初めてうつ状態を発症して、高校を通信制に変えたんです。そこから、たまたま体調が回復して受験がうまくいったので、大学には入学できました。入学当初は双極症だということが分かっていなかったので、アルバイトなど活動的にやりたいなと思ってたんですが、上京して1人暮らしという状況下では、なかなか体調が安定しなくて…。

双極症の診断を受けたのは2020年の1月。そこから4年が経って、まだ大学3年生です。単位が取れなくて、学業一本に集中しているので、アルバイトをした期間が非常に短いです。

でも診断が出た当初は、みんなと同じような学生生活を送りたいという思いが強かったので、塾講師のバイトにもチャレンジしてみたんです。病気のことは伝えずに始めたんですけど、半年くらいたった時に、うつ状態になって休むことが増えてしまい…。結局症状のことは伝えないまま欠勤が続いて、居づらくなって、そのまま辞めました。

アルバイトやインターンにしても、いざチャレンジしようと思っても、体調の波に振り回されることが多かったです。

りゅう(大2):自分の場合は、高校を卒業して地元(新潟)から東京に行って、1年近くフリーターや日雇いバイトをやっていました。最初はうまく働けなかったんですが、スポーツバーで働いたときは、社員さんに結構よくしてもらった記憶があります。障害のことを伝えずに働き始めたんですが、途中でバレて。でも理解してもらえて、業務マニュアルを作ってもらったり、そういう良い経験を東京の時はできたかなと思います。

働く上で困ったのは、毎日決まった時間に起きるのが難しく、移動に支障がでてしまうことです。地方に住んでいるので、1回電車やバスに乗り遅れたら1時間以上待たないといけない状況なんですよ。1つ逃すと絶対遅刻になる。プロサッカークラブのボランティアをしているんですけど、朝、6~7時に家を出て、20時ぐらいに帰宅する日があるんですね。その移動がきつかった。業務内容や学校の勉強でもきつい部分はありますが、俺にとっては移動の方がきついと感じていたんです。

もともと人に頼ったり相談することが苦手だったんですが、移動が楽になる手段を得たくて、同じボランティアで、自分の家の近くを通る人に送迎を頼み、引き受けてもらえるようになりました。やっぱり移動の負担が全然違うので、その負担が減ったのは大きかったですね。

アルバイトで双極症をオープンにするタイミング

――先ほどの話を踏まえて、お互いに気になることをお話いただければと思います。「もう少しここを聞いてみたい!」というのはありますか?

ふうか(美容学生)双極症を開示するタイミングについて、みなさんどんな感じなのか聞いてみたいです。アルバイトの面接でオープンにするか、働くことが決まってから言ったらいいのか困ってたので…。

なべし(大3):僕の経験上、 体調がいい時期に入っても、いずれ体調が悪くなる。でも「双極症です」とまで言ってしまうと採用されにくいかもしれないですよね。

だからバイトの面接のときに、「最近体調が悪くなることもあった」と調子を崩した時の保険をかけつつ、「ちゃんと働きたいし、働ける」ってところも伝えるのがいいのかなって思いました。

ふうか(美容学生):ありがとうございます。めっちゃ参考になります。

なべし(大3):きりゅーさんはどうですか?バイトをしていた時にオープンにされていたって聞きましたけど。

きりゅー(大3):僕は途中からですね。そもそもバイトを始めた時には双極症の症状も出てなかったので。

一度地方でリゾートバイトをしたことがあるんですけど、途中からうまくいかなくなったんです。その時に「実は、配慮してほしいんです」みたいに言いました。後出しなのでちょっとずるいなと思いますけど、採用の段階では、相手から聞かれない限りは触れず、後で困り事が発生したタイミングで伝え方を考えるっていうのがいいのかなと思ってます。

なべし(大3):いきなり「双極症で…」と伝えるのも大丈夫なのかな?と思うし、障害について何も言わずに入って、体調悪くなったらどうしようっていう不安もあるし。難しい判断ですよね。

ふうか(美容学生):タイミングと伝え方、難しいですよね。

なべし(大3):うつ状態になってから言うのも、なんかハードル高いし。

きりゅー(大3):なっちゃうと言えないですしね。

なべし(大3):言える状態じゃない(笑)。

きりゅー(大3):正確なところは覚えてないんですけど、僕は1回軽くうつっぽくなって、仕事をドタキャンのようなかたちで休んだときに「実は…」と話したような気がします。症状が安定してる時には普通の人と同じなんだから、その場限りの人たちにわざわざ「自分はこうなんです」と言う必要全然ないかなって。

でも長い関係性になりそうだったり、実際に長い関係になっている人には、自分の症状について伝えられるといいとは思いますけどね。

ふうか(美容学生):りゅうさんはどうですか?

りゅう(大2):俺は中1から双極症の診断が出ていたんですけど、友達に卒業するまで言えなくて。今も、双極症のことを知らない方に説明するのはかなり難しい。

例えばアルバイトの面接に行ったときに、こちらが勇気を出して伝えたとしても、不採用になる確率も高い。「分かったよ。配慮するよ」と言ってたのに、全然配慮がないなんてこともありそうだなって怖さもありますよね。新潟に帰ってきてからも、障害について何も言わずに塾講師や工場勤務をしていて、直近だとラーメン屋で働いたんです。

でも、障害が新しく増えちゃったんですよ。不安を感じやすくて、それを言葉にできずに硬直したり意識を失ったりして、働けなくなった。

そこで考えたのが、受かる確率が極めて低いかもしれないけど、自分の障害や、どう治療を行ってサポートを受けているか、自分の苦手なことや短所をどうカバーしているか、今までのボランティアやアルバイトで「これはできました」とか「こういうスキルがあります」ということを、書類や面接でしっかり説明する。そのうえで、もしオッケーしてくれるところがあれば、働きたいなと思っています。現実はそううまくいかないかもしれませんが。

【監修:二宮ひとみ(臨床心理士・公認心理師)】

U25座談会とは?

双極症(双極性障害)は、10代後半〜20代に発症しやすいと言われています。多くの人が初めての就職活動を経験するなど、働くことへの不安も多い時期でもありますが、実際にどのような悩みや不安と付き合い、どのように工夫や対処をしているのかについての情報は多くありません。そこで、双極はたらくラボのWebメディアでは「U25」と称し、学生や若手社会人向けの座談会を企画。同年代や次世代の方々に少しでも情報を届けることが目的です。

編集長の著書『躁うつの波と付き合いながら働く方法』が発売!

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双極症での働き方に悩む方へのヒントが詰まった一冊です。ぜひお手にとってご覧ください。

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