新卒カードか自分に合った働き方か。双極症の学生4名が語る就職活動での悩みとは?【U25座談会】

新卒カードか自分に合った働き方か。双極症の学生4名が語る就職活動での悩みとは?【U25座談会】

公開日:2024.7.1
最終更新日: 2024.7.5

社会との接点が、ぐっと増える10代後半から20代。

進学や就職など、様々な選択肢が目の前に広がって、「自分はどんな道を歩もうか」と希望と不安が入り混じる。

そんな時期に双極症(双極性障害)と診断されたら…?

双極はたらくラボでは、2024年3月15日に双極症の学生を対象としたオンライン座談会を開催。

「学生×働く」というテーマについて、双極症と向き合いながらアルバイトやインターン・就職活動を経験中の学生たちが、それぞれの思いを語りました。

今回は、座談会で語られた「就職活動での困りごと・工夫」について、ご紹介します。

▶前編「アルバイトやインターンをするうえでの困りごとや工夫」についてはこちら

※本記事の情報は2024年3月15日時点のものです

参加者プロフィール

きりゅー
双極症Ⅰ型。大学3年生・24歳。2020年に双極症の診断を受ける。現在就活中。
過去行ったアルバイト:塾講師・ホテルスタッフなど

なべし
双極症Ⅱ型。大学3年生・23歳。2020年に双極症の診断を受ける。現在就活中。
過去行ったアルバイト:塾講師

ふうか
双極症Ⅱ型。美容学生・24歳。2022年に双極症の診断を受ける。美容学校を3月末に退学。
過去行ったアルバイト:アパレルなど

りゅう
双極症Ⅱ型。大学2年生・23歳。中学1年生の時に双極症の診断を受ける。大学を3月末に退学。
過去行ったアルバイト:工場での派遣・スポーツバー・塾講師・ラーメン屋など

新卒・一般枠・障害者雇用…それぞれの就職活動の進め方

――学校を卒業して働く際の不安や、就活中の方であれば工夫していることなど、 皆さんのご経験を踏まえて、それぞれ教えてください。

ふうか(美容学生):私の場合、美容学校を途中で辞めることになったので、一応高卒になるんです。今年中には就職したいという目標を持ちつつ、まずは働くことに慣れるためにアルバイトから始めたいなと思っています。

去年、軽躁状態で「何かやりたい!」という衝動に駆られて復学したんですが、急に生活が変わって周り同じように学校生活を送らなきゃいけなくなったのが、結構きつくって。そこから、いきなりフルで動くのではなく、少しずつ体を慣らしていくようなやり方のほうが自分には合っているのかなと思うようになりました。例えば週1~2勤務から始めて、慣れてきたら徐々に増やしていく。そういった形で進めていけたらいいなと。

退学したら学校に紹介してもらうなどのツテがなくなるので、就活をどういうふうに始めたらいいのか、少し不安はあります。でも今は就労継続支援B型に通っていて、相談できる人がいるので、前向きに取り組んでいきたいです。

※就労継続支援B型:病気や障害などがあって、一般企業や事業所で働くのが難しい方に就労機会を提供し、就労訓練や支援を受けることができる障害福祉サービス

なべし(大3):僕は大学3年生で、卒業できそうな見込みも立っていている状況です。…となると、新卒カードを使うかどうかの話がありますよね。ふうかさんのおっしゃる通り、スモールステップで進むという考え方もあると思いますが、僕はフルタイム・正社員にこだわっているところがあって。自分の周りを見ると、みんな当たり前のように新卒カードを使って新卒一括採用で就職をし、良い企業に入っているんです。「じゃあ自分はどうしよう」と悩んだときに、今の自分にとっては、大手企業に障害者雇用枠でフルタイムの正社員として雇ってもらうのが1番いい選択じゃないかと思うようになりました。それで、新卒採用の就活を障害者雇用枠で進めています。

――最初から、障害者雇用枠にしようと決めたんですか?

なべし(大3):大学3年生の夏頃は軽躁気味だったので、「この調子だと、もしかしたら一般枠で就活できるかも!」と思っていました。それが軽躁の波がおさまって現実的な思考になった時に、いわゆる「普通」にやれないのが自分だなと思いはじめまして。そこから、世間の「普通」をちょっと1回捨てて就活をしたほうがいいなと考えるようになりました。

その中でも、まだフルタイムで働くことにこだわっていますが、最悪無理だったら、また考えればいいかなと思っています。せっかく大学を卒業できそうで、新卒というみんなが一斉に就活しているタイミングなので、自分のできる範囲でフルタイムの勤務を試してみたいんです。

りゅう(大2):自分は大学を3月末で辞めた後、就労移行支援に通おうと思っているので、見学を進めようとしています。考えすぎて行動できなくなる傾向があるんですが、福祉の方に「とりあえず見学と体験に1週間行こう」と言われたので、行ってみようと。施設によって雰囲気や利用者の年代も違うと思うので、自分に合う通いやすい場所を見つけて、最終的には障害者雇用枠で働けるまでになったらいいなと思っています。

自分のやりたいことがまだはっきりと分からず困っているんですが、医療や福祉のチームサポートを受けるようになって、前向きになってきました。

※就労移行支援:障害のある方が、就職に必要な知識やスキル向上のための支援を受けることができる障害福祉サービス

――福祉の方とのつながりや就労移行支援施設は、ご自身で探されているのでしょうか?

りゅう(大2)基幹相談支援センターっていうのがありまして、 私が住んでいる地区を担当している相談員さんに頼っています。その相談員さんは、困り事や福祉サービスの利用に関して、次の場所まで繋いでくれたり、一緒に協力して就労移行支援の見学や体験に行ったり、役所への相談とかも一緒にやってくださる方なんで。

※基幹相談支援センター: 障害のある方やそのご家族などが安心して暮らせるように、様々な相談に応じたり、必要な情報提供やサービス利用の調整を行う、地域の相談支援の中核的な役割を担う機関

きりゅー(大3):僕もいろいろな選択肢を考えたんですが、一度きりのチャンスなので、新卒カードに挑戦したいと思って、25卒として就活しています。2年留年しているので実質6年生なんですけどね。ゲームが好きなので、ゲームに関わる仕事がしたいと思って、一般就労を目指して就活しているのが現状です。

――病気を開示しないクローズでの一般就労の道を選ばれたんですね。就活を進める中で、困ったことはありますか?

※クローズ:病気を開示しないこと

きりゅー(大3):「留年していた2年間に何をしていたのか」という質問を受ける度に、回答に困ります。休学中に半年間リゾートバイトをしていた経験をうまく説明しながら、なんとか乗り切ろうとしていますが…。

なべし(大3):僕も2年留年しているんですが、一般枠で就活をしていた時には、その説明に苦労していました。

大学のキャリア支援室に相談したときに、「意外と、『遊んでました』と説明しても大丈夫!」と言われたんですが、僕は2年間も遊ぶようなタイプではないので、その説明はちょっとできないな…と。

きりゅー:そうですよね。

なべし(大3):それ以外にも、障害の影響で高校を転校していたり、履歴書を見ただけで一般の人と比べた時に色々ツッコミどころが多くて。それで一般枠はしんどいなと思った部分もあります。困った結果、障害者枠での就活をすることに決めました。

ただ、障害者雇用枠でもフルタイム勤務ができるかどうかが問われるので、その説明には苦労しています。自分がどう体調に気をつけてるかをアピールしていますが、フルタイムで働けるかは、正直やってみないと分からない。内心、困った時にはサポートしてほしいと思っていますが、なかなか言えないですね。

双極症であることを受け入れきれない苦しみに、どう折り合いをつける?

――これまでの話も踏まえ、お互いの就職活動や今後の働き方に関する悩みや疑問があれば、ぜひご質問ください。例えば、「こんなことに困っている」「ここはどのように対応しているの?」といったことでも構いません。

なべし(大3):1点聞いてみたいことがあって。状態が少し良くなった時に「治ったかもしれない。このままいけるかもしれない」と期待してしまうことってありせんか?これって、結局自分が病気を受け入れきれてないのかなと思っているんです。いわゆる「普通」のレールにしがみついてしまい、それができない自分に対しての苦しみがある。皆さんも同じような経験はありますか?1人で抱え込むことが多かったので、こういう機会に聞いてみたくて。

ふうか(美容学生):私は診断を受けた時点で安心したタイプだったんです。精神科には通っていたものの、診断がつかず、グレーゾーンのような状態でもがいていたことがすごく辛かったので、病気だと分かった時に、とても安心しました。

うつ状態や混合状態になると自分を責めやすくなる一方、軽躁状態になるとそれがなくなるので、「治ったかも」と思う部分もありました。それが最近は、軽躁状態になっても「今、軽躁だな」と認識ができるようになってきて。

もちろんプライドもありますし、周りと同じように働いて稼げないのに、お金を使ってしまう自分に、「あーー」嫌気がさすこともあります。ただ、病気の症状の影響もあるので、そこを受け入れつつ、これから寛解に向かっていきたいという気持ちでいます。

きりゅー(大3):病気を受け入れたつもりではいるんですが、就活中心の生活になる中で、自分にハッパをかけなきゃいけない場面が多々あります。正直なところ、自分が病気を持っていることを思い出すのは、夜に薬を飲む時だけ。その時にだけは、病気のことを忘れないようにしています。主治医からは「睡眠時間を6時間以上確保すること」「生活リズムを崩さないようにすること」の2点を守ることだけを言われているので、それを守りながら、あとはもうひたすら頑張るしかない。

この状況が、実は躁状態で、今後うつ状態になる可能性もあると思っているんですが、実際にどうなるかはやってみないと分かりません。「今が、躁状態じゃないよね」って信じながら日々を過ごしている感じですね。

りゅう(大2):軽躁状態がいいと思うよりも、自分の気分を低めに安定させて、真摯に治療に取り組むことのほうがが大事だなと思うようになりました。フラットで落ち着いた状態を底上げしていこうというイメージに変えてから、少し楽になった気がします。例えば、スケジュールを詰めすぎないように調整したり。

なべし(大3):落ち着いた状態を底上げするって、めちゃくちゃいい考え方だなと思いました。軽躁の時は色々活動ができて楽しいので、その状態が自分の正しい姿だって思いがちになりますが。

りゅう(大2):分かります。めちゃくちゃ分かります。

なべしさん(大3):落ち着いた自分っていうのを評価して、そこを自分だって認めないと始まらないなと思いましたね。

【監修:二宮ひとみ(臨床心理士・公認心理師)】

U25座談会とは?

双極症(双極性障害)は、10代後半〜20代に発症しやすいと言われています。多くの人が初めての就職活動を経験するなど、働くことへの不安も多い時期でもありますが、実際にどのような悩みや不安と付き合い、どのように工夫や対処をしているのかについての情報は多くありません。そこで、双極はたらくラボのWebメディアでは「U25」と称し、学生や若手社会人向けの座談会を企画。同年代や次世代の方々に少しでも情報を届けることが目的です。