
双極性障害での子育てと仕事の両立 当事者による工夫を紹介
双極性障害を抱えながらの「妊娠出産」「仕事復帰」「仕事と育児の両立」をテーマに、当事者2人の対談を実施。
進行役のひなさんと回答者のイブさんは以前「働く工夫#ショート」にも出演いただきました。
事前にまとめていただいた情報もふまえ、対談を3回に分けてお届けします。
最終回は「双極性障害での仕事と育児の両立」についてです。
当事者に聞く、双極性障害と「妊娠出産」「仕事復帰」「仕事と育児の両立」

イブさん プロフィール
・女性:双極性障害Ⅱ型
・夫、子ども2人の4人暮らし
・新卒で金融系のコンサルティング企業に入社。退職後に妊娠・出産・育児を経て現在はコンサルティング企業で調査・提案などの業務に従事
イブさんの「働く工夫#ショート」はこちら

ひなさん プロフィール
・女性:双極性障害Ⅱ型
・夫、子ども1人の3人暮らし
・大学2年生の時に摂食障害の疑いで通院開始
・新卒で入社した会社を5年目に休職した際、診断書に「双極性障害」と記載されていた
・建設関連企業で設計補助として勤務後、結婚して妊娠・出産。まだ仕事復帰はしていない
ひなさんの「働く工夫#ショート」はこちら
目次
双極性障害での子育てと仕事の両立は可能
「生活リズムが整う」

双極性障害でも子育てと仕事の両立ができるのか、という点をお聞きしたいです。
事前回答では「できます。両立がおすすめですよ」
と仰っていましたね。
はい。
一番のおすすめポイントは、生活リズムが崩れないことです。
子どものおかげで自分の生活が整い、躁転しにくくなります。
「朝は何時に子どもを起こそう」と決めるので、私の身体も動きやすいんですよ。
自分1人だったら時間を気にせず寝たいだけ寝ていると思いますが、子どものために朝ごはんもちゃんと作るし、そのために前日も徹夜はしませんね。
仕事のためだけだとちょっと億劫ですが、かわいい子どもの健康のためなら規則正しく生活できるんです。
あと、子どもが起こしに来てくれるのもかわいいから、すぐ起きられますね(笑)。


子育てや仕事が生活リズムを作り、病状のコントロールに良い影響を与えているんですね。

双極性障害での子育てと仕事の両立ポイント
「子どものストレスを溜めない」

では双極性障害を抱えながら、子育てと仕事を両立するために気を付けていることをうかがいたいです。
事前回答では、
・子育てをしているとメールを溜め込みやすいので、早めにレスポンスする
・2人のお子さんが同時に習い事に行けるようスケジュールを組む
・怒りすぎてしまったときなど、育児の失敗に関する悩みは行政の窓口で相談する
という3つのポイントを挙げていただきました。
私の場合、育児と双極性障害はそこまで悪い影響を及ぼしあわないですね。
仕事は症状のせいで頑張りすぎてしまうことはありますが、子育てに関しては極度のストレスはあまりかからないです。
気を付けているポイントがあるとすれば、子どものストレスを溜めないようにすること。
今後反抗期が来たら、子どものイライラが私に伝染する可能性があると思います。
なので、そこをコントロールすることが大切かなと。
あとはイベントの前後は、気分が上がりすぎないよう気を付ける。
基本的に家族で一緒に過ごすことで、子どもと大人の気分の波が同じくらいになるよう調整します。
うちは夫も一緒に「プリキュア」を見てますしね(笑)。


そうなんですね(笑)。

子どもと一緒に行動することで、子どもがイライラしているときの気持ちが分かるようになります。
「お腹が空いているわけではなさそう」とか「さっきテレビを見たから今は眠いのかな」など。
イベントを共有して一緒に体験する方が、子どもの気持ちに気付きやすくなりますね。
私の経験上、子育てのストレスを減らすには、子どものストレスを減らすのが一番だと感じます。
そのためには、できるだけ同じ時間を子どもたちと共有することが有効だと思っています。
時間を共有できないときは、習い事の後に「習った内容をお母さんに教えて」とか声を掛けています。

子育てと仕事を両立する中で自分の時間は?
効率化の工夫

親子の時間を重視すれば、自分と子どもの気分が両方良くなっていくということですね。
確かにそういう意味では、自分だけのために使う時間はほとんどないかもしれません。
仕事もしているので、寝る前にスマートフォンで漫画を読む時間くらいだと思います。
なので、自分だけのために時間を作るのは難しいですが、私の場合は自分の趣味に子どもを引き込んでいますね。
図書館に行ったり、ピアノを演奏したり。
好きなことであれば一緒に楽しめるのでおすすめです。


お子さんとの時間を大事にすることで、問題が解決することは多いですか。
そうですね。


家事・育児の負担に対する工夫についてお聞きします。
なかには、お弁当作りが負担になっている方もいらっしゃると思うのですが、その点はどうですか?
うちはお弁当を作るとしても週に1回です。
作らなくても済むように、給食が出る幼稚園を選びました。
あと掃除では、床拭きロボットのブラーバを使っています。
日中はコードレス掃除機をかけて、子どもが寝た後にブラーバをかけるんです。
ただし壊れやすいのがデメリット。
修理が必要だったり意外と難しいこともあるので、そういうのが苦手な方にとってはストレスになるかもしれません。


そうですよね。

私の知り合いにフルタイムで働いているお母様がいらっしゃいます。
そこでは家事炊事は100%旦那さんの担当で、食洗機や電気調理器を使っているそうです。
なので、フルタイムで仕事をしているなら、家事は家電を使う。
それか夫に協力してもらわないと厳しいかな、と思います。
逆に家事の分担とデジタル化ができるのであれば、家事の効率化を図れるので、自分だけの時間も取りやすいかもしれません。

双極性障害での子育てでは
話題の共有と夫の協力が大切

パートナーの協力は大事ですね。
イブさんの旦那さんは在宅勤務が多く、家事も手伝ってくださるとのこと。
事前回答ではご夫婦で相談し合う項目を教えていただきました。
・相談なしに1万円を超える買い物をしない
・スケジュールアプリで家族全員の予定を共有する
・3日に1回くらい育児について話し合い共通認識を持つ
など。
家事にも協力的な、すてきな旦那さんという感じがしますね。
旦那さんとの話題の共有はやはり大事ですか?
はい。
特に子どもに関する話題の共有をします。
100%知ってもらう必要はありませんが、トラブルが起きる前に、頭に入れておいてほしいことは、聞き流し程度でもいいので共有しています。


なるほど。
国語の授業で「字がきれい」と褒められた、などの良い情報も共有しています。
夫がそれを知って声を掛けてあげれば、子どもも喜ぶからです。
ちなみに家事に関しては、夫婦の割合5対5ぐらいの気持ちでやっています。
でも、もし夫に聞いたら「8対2で自分の割合が多い」とか言うかも(笑)。



旦那さんは家事が得意なんですね。
「得意じゃないけど、やらなあかんやろ」って言っています(笑)。


すばらしいです!
旦那さんの協力が大きいということが分かりました。
「家事育児とかを9割やりなさい」なんて言われても無理ですしね……。
双極性障害での子育てと仕事の両立について感想

最後に、双極性障害での子育てと仕事の両立について感想をいただけますか?
双極性障害と育児はあまり悪い影響を及ぼし合いませんでした。
子どもの視点を常に意識するので、必然的に自分を客観視できます。
その点では、むしろ良い影響があると感じています。
一つ気をつけるポイントを挙げるとすれば、子どものストレスを減らすことです。
私が言った対処法以外にも、運動や習い事をさせるとか、子どものストレス発散になるものでも良いと思います。
また子育てと仕事の両立をするには、夫の協力が同程度あることが重要です。
双極性障害に関係なく、夫が非協力的であれば、夫の意識を変えるしかありません。
協力関係を築けないと、子育てを始めても絶対つらくなると思います。
あとキャリアについては「好きな仕事を続けたい・始めたい」という理想に対し、実際は時間の融通がきかなかったり、精神的な余裕がなくなったりするので、ハードルが高くなると思います。
子育て中でお仕事ができない人も、自分を責めず、まずは体調が安定することを大事にしてください。
子育てはマルチタスクになりますし、自分以外の人間を指導する面もあるので、子どもだけでなく自分も成長する機会になります。
ただ仕事に愛着があって辞めるのにすごく抵抗がある場合は難しいですよね。
私は1回、完全にキャリアを切ったので「仕事は心理的にもプレッシャーがかかるし、今は育児に夢中になる時期かな」と言えるのですが。
なので「夫の協力を得られるか」「キャリアを継続したいか」「本当に子どもを産みたいか」を改めて考えると良いと思います。
逆にこの3段階さえクリアすれば、めちゃくちゃ楽しくなりますよ、という感じですかね。
結果論ですが、私としては「最後はうまくいきますよ」と言いたいです。



私は双極性障害を抱えて妊娠・出産することにすごく不安を持っていました。
ですが、双極性障害について調べたり、気分の波を落ち着ける工夫をして過ごすことで、症状は安定してきました。
出産後、育児疲れはあったものの、夫や実家の家族の協力もあり、抑えられない波が来ることはありませんでした。
妊娠を考えている方は結構不安があるかと思います。
人によって体調は違うので絶対とは言えませんが、適切に対処できれば大丈夫なパターンもあるので安心してほしいです。
今回の対談で、夫としっかり連携し子どもとの話題を共有して、家族のコミュニケーションを取っていくのが大事だと気付きました。
適切な対処ができれば、育児・仕事・双極性障害の治療をうまくやっていけると分かったので、復職も前向きに考えたいです。
[執筆/野木奈都、校正・校閲/二宮 ひとみ(臨床心理士・公認心理師)、編集/山口恵里佳]
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ライター/編集者/ヨガ講師
1994年生まれ。双極性障害やうつ病の友人との交流を機に、精神疾患に関する勉強と記事執筆を開始。ヨガ講師として人の心身に向き合う活動にも取り組む。